第1四半期は景気回復が顕著に現れる
ゼロコロナ政策で大きなダメージを受けた中国経済が回復を見せている。1~3月のGDP前年比伸び率は4.5%で、 22年10~12月期(2.9%)から加速した 。年間目標5%こそ下回ったものの、市場予想を上回る結果となった。
社会消費品小売総額は5.8%増加しており、そのうち飲食業の売上高は昨年同時期と比べ、13.9%と大幅に増加した。
この一方で、輸出は昨年同時期の0.5%増と、伸び悩んでいる。欧米の利上げに伴い、外需はこれからも縮小すると思われる。
規制緩和が進む業界とそうでない業界の現状
2020年前後から始まった政府による規制強化により、アリババをはじめとするECや、テンセントをはじめとするゲーム企業がこぞって収益鈍化に陥った。
さらに学習塾関連企業は事業撤退に追い込まれ、インフルエンサーの脱税規制強化やファングループの管理強化など、各業界が政府の規制強化による逆風にさらされていた。
これにより、年間売上2,000万元以上であった中国ネット企業の2022年合計売上は、前年比1.1%減少し、2017年の統計開始以来、初めてのマイナス成長へ。
しかし、経済回復が課題に迫られたことで、政府はついにテックや不動産に対する規制緩和に乗り出した。
まず、規制当局はプラットフォーム経済の発展を支援すると表明し、杭州市政府もアリババと戦略的協定を締結。
ゲーム業界においても、新作ゲームに対する販売ライセンスの発行を再開しており、ゲーム市場の回復が期待されている。また、不動産業界においても、購入制限の緩和に至った。
ただ、テック企業への規制が緩和されるとはいえ、半導体を巡り米中が強烈な対立を行っている現在、テック企業より、半導体への投資を加速させる中国政府の政策転換の動きもあると分析されている。
実際に、今年の中国全人代(国会に当たる)の代表者リストでは、テンセントやアリババなどネット大手のCEOの名前が消え、代わりにSMICなど半導体分野からの新顔が登場した。
一方で、学習塾への規制に変化はなく、芸能業界においても、ファングループの管理強化など、規制が継続している。
この他に、会計業界への監督を強化する姿勢も見られる。中国財政省は今年3月に監査で「重大な不備」が判明したとして、会計事務所のデロイトに罰金を科した後、全国で財務会計監督の特別行動を展開。財務不正やデータ改ざんなどの調査を開始した。
また、最近世界中でブームとなっているChatGPTについては、生成AIに社会主義核心価値観の反映を要求し、国家の分裂などを扇動する内容を禁止する規則草案を公開。画像、音声、動画などのコンテンツを生成するAIに対して慎重な姿勢を見せている。
消費の活性化に注力
中国政府は国内消費の回復と拡大に重点を置くことを発表。これにより、Q1のGDP成長寄与率は66.6%に上昇した。
具体的な消費促進政策として、
- 政府による消費クーポンの発行(特に自動車や家電などの大型商品)
- ナイトタイムエコノミー支援
- 屋台経済支援
などがある。
地方政府も各自の消費促進策を打ち出し、3月から北京、上海を含む数十省・市が自動車や家電消費向けの消費クーポンを発行した。この他、浙江省寧波市が夜の8時以後の地下鉄の利用を無料にするなど、各地で消費促進が行われている。
外資の誘致を積極推進
ゼロコロナ政策で外資の中国市場に対する懸念が高まっていたが、経済回復の一環として、中国政府は外資誘致を2023年の重要な目標に掲げた。
第1四半期は、イギリス、フランス、カナダ、ドイツの対中投資は前年比それぞれ680.3%、635.5%、179.7%、60.8%増加し、日本は47.7%増加した。
さらに上海市では、多国籍企業の地域本部を今年新たに60ヶ所新設する目標を掲げ、外資企業の投資活動に補助金を打ち出し、重大なプロジェクトに最高1億元(約20億円)の奨励金を与えると発表。
中国の積極的な外資誘致に対して、Apple社のCEOやP&Gの会長など、欧米企業の首脳も相次いで中国を訪問するなど、経済回復している中国でのビジネスチャンスに期待が寄せらている。
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