BMWが中国人差別で大炎上
上海モーターショーにて事件は起きた。BMW傘下「MINI」のブースで配られているアイスを中国人来場客がもらおうとしたところ、スタッフは「もうない」と言ったのにも関わらず、その直後にもらいに来た外国人の男性にアイスを配ったのである。この一連の様子を撮影した動画はネットで拡散され、中国人差別だとして大きな波紋を呼んだ。
その後、BMWは謝罪のコメントを二度発表したが、「スタッフはまだ若いので、許してあげてほしい」、「実は外国人の男性は社員であり、来場客に配布するアイスとは別に現場の社員のためのアイスを少量用意していた」といったコメントが火に油を注いだ。
これにより、BMW車の不買を呼びかける動きも一部も出てくるなど、大炎上する結果となった。
事件の直前に同社幹部がモーターショーで「BMWの心は中国にある」と述べ、中国事業を拡大していく姿勢を示したばかりだが、この事件の影響でBMWの株価は3%急落した。
政府系メディアの元編集長である胡锡进氏は、経済回復のため、外資誘致を積極的に行っている中国政府の意向と反するこの事件の進展に対し、他の出展企業にも緊張が及ぶ可能性があるため、BMWへの過度な批判をやめるようと呼びかけた。
過去に炎上したブランドは今
中国国力の上昇に伴い、本土のブランドが成長し、ナショナリズムも高まっている。これは外資企業が中国進出する上で懸念点となっており、上記で述べたBMWのような炎上事件はブランドにとって絶対に避けたいものだ。
そこで今回、以前中国で炎上した外資ブランドの炎上経緯とその後の展開を分析した。
上記の炎上したブランドのうち、一番大きな損失を被ったのは韓国のロッテである。
ロッテグループは2008年に中国に進出し、販売を拡大。しかし、2017年にロッテ傘下のゴルフ場を米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の配備地として提供したことで、中国政府から強い反発を受けた。
この件を機に中国消防当局は、現地ロッテマートの複数店舗の営業停止を決定。さらに市民によるロッテ商品の不買運動や抗議デモが広がり、ロッテマートの業績が悪化。その後複数の店舗を閉鎖し、昨年の2022年に成都にある最後となった店舗の売却計画を決定した。
ロッテは当時中国で約112店舗を展開し、中国は最大の海外市場であったが、THAAD配置事件により、事業撤退に追い込まれる結果となった。
また、イタリアのファッションブランドDolce & Gabbanaは、2018年中国でのショーを控え、プロモーション動画を公開。その内容が「中国を侮辱している」として物議をかもし、出演予定だった中国人モデルが次々とボイコットし、ショーは中止となった。
動画は現地のモデルが箸でピザを食べようと苦戦する内容で、瞬く間にネットに広まったが、加えて創業者がSNSに中国に対するネガティブなコメントを投稿した事態はさらに悪化した。
その後、中国ECプラットフォームは、こぞってDolce & Gabbanaの商品を撤去。炎上事件から3年後の2021年に同社の中国市場における売上は前年比20%増加と、回復を見せたが、それでも2018年前の水準まで回復していない状態である。
炎上は日本ブランドも例外ではない。
2021年、スウェーデンのファーストファッションブランドH&Mが人権問題への懸念から、「新疆から綿を調達していない」と表明し、炎上。
また、中国SNSで持続可能な綿花栽培を促進する「ベター・コットン・イニシアティブ(BCI)」も批判の標的に。同グループはが人権問題への懸念を理由に新疆の綿承認を停止。BCIにはナイキ、アディダス、そしてユニクロの運営会社ファーストリテイリングなどが加盟しているため、これらの企業も相次いで批判を浴びることとなった。
一連の炎上の中で、最初に国営メディアに取り上げられたH&Mは、EC店舗がプラットフォームにブロックされ、ユーザーの商品検索を制限させられたことで、中国事業は大きな打撃を受けたが、ユニクロ、ナイキなどはEC店舗閉鎖の事態にまでは至らなかった。
中国でのタブー
これらの炎上事件がメディアに大々的に報道された結果、日系企業の中国市場に対する懸念が高まったのは言うまでもないだろう。
こうした事態を避けるには、少なくとも以下の2点を注意する必要がある。
- 政治や文化問題の取り扱いには十分に注意すべき
- 事件直後には適切な対応を。対応によっては、さらに炎上する可能性が高い
地縁政治や領土などセンシティブな話題に関しては、外資企業に限らず、中国国内の企業でも不当な取り扱いで炎上したケースがあるため、十分に注意すべきである。
そして、何より事件後のブランドの対応は事態の進展を大きく左右するため、今回のBMWの事例、およびDolce & Gabbanaの事例から見ると、直後の対応は企業の危機管理チームの能力が問われる。炎上による信用失墜はおろか、中国市場を一晩にして失うこともけして大げさではないのだ。
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