中国では映画やアニメなどをIP(知的財産)と呼んでおり、それらに登場するキャラクターなどを使用したIPビジネスが近年現地で成長を見せている。中国ECプラットフォーム大手の天猫(Tmall)によると、2020年の大型ECセールスイベント「独身の日(ダブルイレブン)」ではIPライセンスに関連した商品の売り上げが前年同期比76%増加していた。

消費の主役がZ世代へと移る中でIPコラボへのニーズも高まっており、中国市場で事業を展開する多くのブランドがIPコラボを重視している。そうした中でキャラクターとのコラボだけでなく、ブランド同士によるコラボも頻繁に見られる。

チャイトピは2022年に中国市場で打ち出され、人気・話題となったIPコラボ事例をまとめました。

ケンタッキー × ポケモン

「国際こどもの日」である6月1日を迎えて、米ファーストフードチェーン大手の「ケンタッキーフライドチキン」が「ポケモン」とコラボし、子ども向けセットの付属品として4種類の限定版おもちゃを打ち出した。その中で、カモノハシのような大きなくちばしを持ったポケモン「コダック」が音楽に合わせて踊るおもちゃが大ブームを巻き起こした。

▲ 踊るコダックのおもちゃ(REDより

Douyin(中国版TikTok)やRED(中国版インスタグラム)などのSNSには同おもちゃを撮影した動画がバズり、その後も類似動画の投稿が続々と現れた。あまりの人気ぶりにケンタッキーに注文が殺到し、多くの中国メディアも連日報道するなどお祭り騒ぎの様相を呈していた。実際に購入している人々の中には若年層の人もおり、ループしたくなる音楽とコダックの独特なダンスが魅力のポイントとなった。

ピザハット × 原神

米ピザチェーン大手の「ピザハット」が中国の大人気ゲーム「原神」とコラボし、ゲームキャラクターのマウスパッドやお皿がついたコラボセットを打ち出した。また、中国各地でゲームのテーマに沿ったコラボ装飾店舗を展開した。

▲ コラボグッズ(REDより

同コラボが開催されるや否や人気が沸騰し、合計32万枚の予約販売チケットは瞬く間に売り切れとなった。また、各地のコラボ装飾店舗では行列ができ上がり、中には熱狂的なファンがなだれ込んだことで混乱状態となり、やむをえず営業中止となった店舗もあった

▲ 大行列が並ぶ広東省のコラボ装飾店舗(REDより

同コラボには原神が抱える数百万人規模のユーザー層からの支持が反映され、中国ゲームと飲食業界のコラボ成功事例の一つともいえる

ラッキンコーヒー × ジョジョの奇妙な冒険

中国コーヒーチェーン大手「ラッキンコーヒー(Luckin Coffee)」が人気アニメ「ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン(以下ストーンオーシャン)」とコラボし、限定デザインのカップスリーブと紙袋がついたドリンクを打ち出した。新メニューの「生酪拿鉄(チーズ・ラテ)」の販売スタートに合わせたコラボでもあった。

▲ コラボドリンク(REDより

日本の漫画が原作となる同アニメは中国でも人気を集めており、現地の動画配信サイト「bilibili(ビリビリ)」では再生回数が2.8億回に達している。当時、アニメの二期目が放送されたことで人気が高まっており、新メニューの宣伝役としてうってつけといえる。その効果が十分に発揮され、初週では659万杯の売り上げを記録し、過去のヒット商品の記録を塗り替えた

ストーンオーシャンは同時期いくつものブランドとコラボを果たし、中国市場で活発な動きを見せた。

Holiland × ハリーポッター

中国ケーキチェーン大手「Holiland(好利来)」は映画「ハリーポッター」とコラボし、作中に登場した道具などをモチーフとしたケーキやパンを打ち出した。中国でも多くのファンから愛されているIPであり、同コラボはSNS上で話題になった。数あるコラボ商品の中でも、特に映画に登場する主人公の誕生日ケーキを忠実に再現したケーキが人気を見せており、品薄状態になっていた。

▲ 映画に登場する主人公の誕生日ケーキを再現したケーキ(REDより

HolilandはIPコラボを積極的に行っており、「ポケモン」や「鬼滅の刃」、「王様ランキング」などの日本IPとのコラボケーキも打ち出している。ハリーポッターとのコラボでは、映画の世界から飛び出したようなケーキにファンからの好評が挙がっていた。作品とのコラボにおける商品化の相性が良いことと、ケーキの再現度が高いことが人気を呼んだと考えられる。

MINISO × トイストーリー

日本ブランド風が特徴的な中国雑貨チェーン大手「MINISO(名創優品)」が映画・トイストーリーに登場するキャラクター「リトルグリーンメン」とコラボし、様々な限定コラボグッズを打ち出した。リトルグリーンメンのお買い物袋やブラインドボックス(中国版ガチャガチャ)、特にペット用の帽子が人気を博しており、品切れが続出した。

▲ コラボグッズの数々(REDより

同企画は当初トイストーリーの製作スタジオ「ピクサー」とのコラボキャンペーンの一部であった。MINISOは消費者のニーズをダイレクトに知るために、コラボした4人のキャラクター人気投票を行った。その結果として、リトルグリーンメンが数万票の支持で一位を獲得し、同キャラクターのコラボ装飾店舗を設置した。その後も、ファンから装飾のアイディアを積極的に取り入れ、消費者参加型のコラボキャンペーンとして成功に至った

ホンダ × 無印良品

「ホンダ」と「無印良品」は中国市場でコラボを果たし、電動自転車「素-MS01」を打ち出した。異色なコラボであるため、現地だけでなく日本でも多くのメディアに取り上げられていた。

▲ ホンダ×無印良品の電動自転車(REDより

白黒の2色展開で、無印良品によるシンプルなデザインとホンダによって開発された本体が融合した製品となっている。ホンダが電動自転車を打ち出した背景には、自社が掲げる電動化戦略と中国電動自転車市場の成長が関係していると思われる。今年の1月には、中国市場で電動二輪車ブランド「Honda e:」を発表し、現地のZ世代向けの3モデルを公開した。

無印良品とのコラボも話題性やブランドイメージの合致だけでなく、Z世代から支持されている同ブランドを通した消費者へのアプローチという狙いもあるかもしれない。

HEYTEA × フラグメント

中国の人気ティードリンクチェーン「HEYTEA(喜茶)」がファッションアーティスト・藤原ヒロシが率いるデザイン集団「フラグメント(FRAGMENT DESIGN)」とコラボし、限定デザインのドリンクを打ち出した。

▲    コラボドリンク&バッジ(REDより

黒を基調にフラグメントのロゴであるイナズマのマークを取り込んだコップに、「イチゴとマルベリー」とドリンクの色も全体に合わせて工夫されていた。また、紙袋も同様にデザインを施され、キャンペーンとして一度の注文で2杯以上を購入した方に数量限定のバッジを贈っていた。ファッションに敏感なZ世代の心を引きつけることに成功し、発売初日で15万杯以上の売り上げを記録した。

HEYTEA × 甄嬛伝

「HEYTEA」は中国の大人気ドラマ「甄嬛伝(宮廷の諍い女)」とコラボし、同作品をテーマとした限定ドリンクや限定グッズなどを打ち出した。

▲ コラボドリンク&グッズ(REDより

コラボに合わせて、HEYTEAのロゴである「ドリンクを飲んでいる人」も作中人物の姿に早変わりしている。

甄嬛伝は2011年に中国で放送された清の後宮を舞台としたドラマであり、現在でも多くの人々から愛されている。SNS上では劇中に登場する人物やセリフに関するネタが使われる場面も少なくない。同ドラマがティードリンクブランドとコラボしたのは初めてのことであり、3日で50万杯の売り上げを記録した。

ラッキンコーヒー × 椰樹

スターバックスに匹敵する中国コーヒーチェーン大手「ラッキンコーヒー(Luckin Coffee)」と現地の国民的ココナッツミルクブランド「椰樹」がコラボし、限定デザインの紙袋とカップスリーブがついたドリンクを打ち出した。当時、ココナッツミルクを34年間も作り続けた椰樹の初めてのコラボであり、椰樹の独特なデザインが目立つ同コラボは公開当時からネット上で大きな話題を呼んだ。

▲ コラボドリンク(REDより

相性から見ても、ココナッツラテでのヒット経験があるラッキンコーヒーはコラボ相手として適任だといえる。そうした相乗効果により、販売開始から1日で66万杯の売り上げを達成した。長年、中国で愛されてきたブランドだけに消費者からの思い入れも深いようだ。

COACH × 大白兎

米ファッションブランド「COACH(コーチ)」が中国の国民的ミルクキャンディーブランド「大白兎奶糖(以下大白兎)」と異色のコラボを果した。コラボ商品のセーターなどには1970~80年代を彷彿とさせるデザインに、大白兎のロゴである白ウサギのキャラクターが取り入れられている。また、コラボ商品を公開する展示会はウサギの穴から構想を得たギャラリーのような空間で開催され、関連商品が芸術品のように陳列されていた。

▲ コラボ展示会(REDより

大白兎は60年以上の歴史を持つブランドであり、同社のミルクキャンディーは現地の人々から長年親しまれてきた。近年、中国では国内ブランドを支持する国潮ブームが起きているため、市場における中国老舗ブランドの存在感も強まっている。

まとめ

日本、欧米のIPが依然として中国市場で高い人気を固持している中で、中国のゲームやドラマといったIPも存在感を放っている。また、コラボ対象はそうしたコンテンツに限らず、根強いファンを持つ現地の国民的なブランドも挙げられる。

コラボの形式においても、よりファンのニーズに寄り添うための人気投票や原作再現などが見られた。年々高まる中国消費者のニーズに応えるためにも、そうした創意工夫がIPコラボには不可欠であると見て取れる。


過去の記事:

【第四弾】中国IPコラボ十選!!(テスラ、原神、ジョジョなど)

【第五弾】中国IPコラボ十選!!ウサギが主役の春節コラボ