IP(Intellectual Property)は直訳すると「知的財産」になる。中国ではブランドと映画やアニメなどがコラボする”IPコラボ”が盛んであり、中にはブランド同士がコラボすることもある。
中国EC大手の京東(JD)が公開した「IPコラボ消費報告」によると、2021年にIPコラボ商品の売り上げの62.6%を貢献したのは女性消費者だった。男性よりも高い興味と消費力を示した。
今回、チャイトピは化粧品ブランドとティードリンクブランドに絞り、女性消費者から支持されているブランドのIPコラボについてご紹介します。
化粧品ブランド
INTO YOU × ロッツォ・ハグベア
中国新興コスメブランド「INTO YOU」が米アニメーション映画『トイストーリー3』に登場するキャラクター「ロッツォ・ハグベア」とコラボ。ピンク色をしたクマのぬいぐるみというイメージ合わせた口紅やアイシャドウパレットなどを含めたギフトボックスを打ち出した。
ロッツォ・ハグベアは抱き締めるとイチゴの匂いがするため、中国では「草莓熊(イチゴベア)」とも呼ばれている。女性の間では人気が高く、ほかにも中国自動車メーカーの「WULING(五菱汽車)」とコラボを果たし、上海で特別オフラインイベントが開催されたことで話題になった。
イヴ・サンローラン × 和平精英
仏ファッションブランドの「イヴ・サンローラン(YSL)」と中国大人気スマホゲーム「和平精英(Game for Peace)」のコラボ。七夕に向けたコラボであり、口紅などが内包された3種類の赤い限定ギフトボックスを打ち出した。また、和平精英のプレーヤーは特別にクーポン券などをゲットすることもできる。
テンセント傘下のバトルロイヤルゲームである和平精英は現地で多くのファンを擁しており、2019年の時点でDAU(1日あたりのアクティブユーザー数)は5000万人を突破した。女性プレーヤーも多く、同じく仏コスメブランドの「ロレアル」も和平精英とコラボし、シャンプーが内包された限定ギフトボックスを打ち出した。また、ゲーム内では特別アイテムとしてシャンプーが登場した。
M・A・C × 王者荣耀
米コスメブランド「M・A・C(マック)」と中国大人気ゲーム「王者栄耀(Honor of Kings)」がコラボし、ゲームに登場する女性キャラクターをテーマとした5種類の口紅を打ち出した。M・A・Cがネット上で、王者栄耀のキャラクターに似合うリップの色を選んでいるユーザーらに気づいたことがきっかけとのこと。
同コラボが話題になった約1 年後にM・A・Cは再び王者栄耀とコラボし、男性キャラクターをテーマとした5種類のコスメセットで女性ファンを惹きつけた。
和平精英と同じくテンセント傘下のオンライン対戦ゲームである王者栄耀もまた女性プレーヤーから支持されており、ほかにも中国コスメブランドの「パーフェクトダイアリー(完美日記)」とのコラボを果たしている。
DHC × ミニオンズ
日本の化粧品・健康食品ブランド「DHC」と米アニメーション映画シリーズ「ミニオンズ」がコラボし、作中に登場するキャラクターがパッケージとなったクレンジングオイルを打ち出した。また、武漢のショッピングストリートではポップアップストアが設置され、着ぐるみのキャラクターとの記念撮影なども行われていた。
同ブランドは過去にも新作映画の公開に合わせて、ユニバーサル・スタジオ・北京の限定版ぬいぐるみである「十二支ミニオンズ」とコラボした経験がある。おちゃめでかわいい同キャラクターはこどもだけでなく、女性にも人気の高い人気を誇っており、現地では「LION(ライオン)」や「Dole(ドール)」など数々のブランドとのコラボを果たしている。
ティードリンクチェーン
LELECHA × Qoo
Qoo(クー)は日本コカ・コーラ傘下の果実ドリンクブランド。2001年ごろに中国市場に進出し、かわいらしい同名のマスコットキャラクターも相まって、一時期現地の小学生らの間で人気を博した。中国の人気ティードリンクブランド「LELECHA」は同キャラクターとコラボし、限定版コースターやストッパー(フタの飲み口を塞ぐ栓)がついたドリンクを打ち出した。また、コラボ商品として数量限定のイヤホンポーチをTmallショップ(中国の通販ショップ)にて販売した。
ポーチの人気は高く、女性ユーザーが大半を占める中国版インスタ「RED(小紅書)」では、販売開始から数日かけて粘った結果ようやく購入できた女性の投稿も見られた。
LELECHAは活発的にIPコラボを行なっており、ほかにも「クレヨンしんちゃん」や「OSAMU GOODS(オサムグッズ)」といった日本IPとのコラボで注目を集めていた。
奈雪の茶 × すずめの戸締まり
日本アニメーション映画「すずめの戸締まり」中国上映に合わせて、現地のティードリンクチェーンブランド「奈雪の茶」がコラボドリンクを打ち出した。カップスリーブには映画のとびらを再現した仕掛けが施され、中国各地ではコラボ装飾の店舗も展開された。
すずめの戸締まりは公開前から中国のSNSで話題となり、監督の新海誠氏がプロモーションで北京・上海を訪れたことも大きく注目された。同作品は女性から高い人気を獲得しており、REDには主人公のコスプレをした者の投稿が数多く見られる。
奈雪の茶 × 武林外伝
「武林外伝」は古代中国を舞台とした2006年のコメディドラマであり、放送当時は現地で高い視聴率を誇っていた。メイン消費者層が女性である「奈雪の茶」は今年3月に武林外伝とのコラボドリンクを打ち出し、SNS上で大きな注目を集めた。同作品が新興ティードリンクブランドとコラボするのは初めてのことであり、当時では店舗の前で商品を求める消費者の行列が伸びていた。限定版のカップスリーブやアクリルスタンド、マグカップなどを打ち出している。
REDでは、子どもの頃から大人まで見続けた思い入れるのあるドラマのコラボドリンクとグッズを手に入れた時に泣きそうになったとコメントも見られた。こうした“思い出”を強調した投稿は中国のネット上で散見しており、同ドラマの現地における根強い人気が伺える。
奈雪の茶は昨年にも同じく古風ドラマの「夢華録」や「蒼蘭訣」とのコラボを果たし、話題を引き起こした。
HEYTEA × FENDI
中国新興ティードリンクチェーン「HEYTEA(喜茶)」とイタリア高級ファッションブランド「FENDI(フェンディ)」が異色のコラボを果たし、現地で大きな話題になった。限定デザインのコラボドリンクが打ち出されるや否や売り切れが続出し、キャンペーンとして贈られるコースターとバッジ、さらに使用済みのドリンクカップまでネット上で転売にかけられる事態が起きた。
コラボドリンクは一杯19元(約370円)であり、高級ブランドに触れるハードルとしては低く、若者が熱狂する原因の一つとなった。結果的に、HEYTEA側は大ヒットという成功を収め、FENDI側は現地における知名度の向上につながった。
HEYTEAはファッションブランド以外にも韓国コスメブランド「3CE」や中国コスメブランド「INTO YOU」とのコラボを打ち出しており、女性消費者へのアプローチを強めている。
まとめ
上記女性向けIPコラボの特徴は以下の3つになる:
- アニメーション映画のキャラクター
- 現地で人気なゲーム
- 思い入れ深いコンテンツ
アメリカのアニメーション映画などに登場するかわいいキャラクターは、そのデザインと個性から中国の女性からも人気を得ている。また、日本アニメも中国では膨大なファンに支えられており、「すずめの戸締まり」は現地上映後大ヒットを記録した。
中国ではゲーム関連のIPコラボも一般的であり、人気ゲームがもたらす集客効果は凄まじく、昨年8月の「ピザハット」と「原神」のコラボがもっともたる例といえる。「和平精英」や「王者栄耀」にのめり込む女性プレイヤーは多く、ブランドにとってはコラボ対象の一つに挙げられる。
中国ゲームが急成長を遂げたように、中国文化を支持する風潮も現地で近年勢いを見せている。そうした中で、中華風な衣装や古風なドラマが人気を見せており、IPコラボにも影響が及んでいる。
今後、女性向けのIPコラボがどのように変化していくか、チャイトピは引き続き注目していきたい。
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