IP(知的財産)についてご存じでしょうか?日本では馴染みのない単語ですが、中国では主に映画やアニメなどのコンテンツを指す。人気なIPがもたらす経済効果は目を見張るものがあり、近年の中国市場ではブランドとIPによるコラボレーションが盛んに行われている。
チャイトピは、近年の中国市場で日本企業・ブランドが打ち出し、注目を集めたコラボ事例をまとめました。
明治 × はたらく細胞
食品メーカー大手・明治(Meiji)の「プロビオヨーグルトR-1」が昨年9月人気アニメ「はたらく細胞」とのコラボを果たした。上海のショッピングモールにてAR体験やパズルなどを楽しむことができるポップアップイベントが行われ、コラボグッズの保温バッグやバッジなどを来場者にプレゼントしていた。健康に役立つ乳酸菌商品のプロビオヨーグルトR-1と同作品のコラボは、イメージ上の相性がピッタリなコラボといえる。

人間の体内にある赤血球や白血球などの細胞を擬人化した人気マンガ及びアニメのはたらく細胞は中国で高い人気を誇っている。現地動画投稿サイト「ビリビリ(bilibili)」では同アニメが2.4億回以上再生されており、勉強になるなどと好評を受けている。
ニコアンド × ジョジョの奇妙な冒険
昨年12月、日本ライフスタイルブランドの「ニコアンド(niko and …)」が中国で大人気なアニメ「ジョジョの奇妙な冒険」の10周年記念特別コラボを打ち出した。上海にあるコラボ装飾店舗では、作中に登場したキャラクターのパネルや乗り物のオブジェ、小道具などが展示されており、没入感のあるアニメの世界を再現した。また、限定コラボグッズでは服やマフラー、缶バッジなどの商品が陳列されていた。

中国版インスタ「RED(小紅書)」や中国版ツイッター「ウェイボー(weibo)」などの現地SNSプラットフォームではコラボに関する投稿で盛り上がり、ニコアンドのRED公式アカウントによるプロモーションの投稿には2,000近くのいいねがついていた。
2019年に中国本土一号店を上海にオープンして以来、同ブランドは現地市場の開拓に力を注ぎ、数々のコラボを打ち出すことで話題を引き起こし、注目を集めた。ジョジョとのコラボも数回重ねており、ほかにも「ジュラシック・パーク」や「新世紀エヴァンゲリオン」とのコラボを果たしている。
ユニクロ × ポップマート
昨年9月、日本ファストファッション大手の「ユニクロ」が中国の人気フィギュアメーカー・ポップマート(POP MART)のキャラクター「LABUBU」とコラボ。とんがり耳にギザギザした歯の同キャラクターがプリントされた数種類のコラボシャツに、特別なLABUBUフィギュアが内包された数量限定のギフトボックスが打ち出された。REDではコラボシャツを身につけたユーザーの投稿に数千いいねがついており、現地における同キャラクターの人気ぶりが見て取れる。

ポップマートは中国のZ世代から支持されているフィギュアメーカーであり、特に代表格ともいえる金髪碧眼のキャラクター「Molly(モリー)」は「コカコーラ」や「ガンダム」「ピンクパンサー」などのブランド・IPとコラボを果たしてきた。
ローソン × 第五人格
コンビニエンスストアチェーン大手の「ローソン」が中国大人気ゲーム「第五人格」と昨年3月にコラボし、全国にコラボ装飾店舗を展開した。同ゲームにとっては4周年記念を迎える特別コラボとなっている。
コラボ装飾店舗ではゲームに登場するキャラクターの絵が各所に貼られ、棚などには特別コラボパッケージのおにぎりやコーヒーが並べられていた。また、キャンペーンとしてゲーム内で使用可能なキャラクターの交換コードも打ち出された。

ローソンは中国市場におけるコラボキャンペーンに注力しており、ほかにも中国大人気ゲーム「原神」や日本アニメ「すずめの戸締まり」などのIPとコラボし、現地で人気の高いIPを通してZ世代の消費者にアプローチを行なっている。
ホンダ × 無印良品
自動車メーカー大手の「ホンダ」と「無印良品」が中国市場でコラボし、電動自転車「素-MS01」を打ち出した。異色なコラボであるため、中国と日本の両国で多くのメディアに取り上げられ、注目を集めていた。

ホンダは電動化戦略を掲げており、成長に勢いのある中国市場で積極的に事業展開を推進してきた。現地の若者に人気な無印良品とのコラボは話題を引き起こし、ホンダの電動自転車事業の宣伝としても一定の効果を発揮したと考えられる。
ほろよい × HARMAY
大手飲料メーカー・サントリーのアルコール飲料ブランド「ほろよい」が中国コスメ専門店「HARMAY」とコラボし、花見の時期と国際女性デー(3月8日)が重なる今年3月に桜をテーマとした特別な装飾店舗を上海に設けた。

店舗は上海の有名観光スポットである武康大楼にあり、街道プロモーションでさくらんぼを乗せたピンク色のコラボ三輪自転車も登場した。また、女性ユーザーの多いREDでは限定版ほろよいとコスメ商品が内包されたギフトボックスを抽選でプレゼントしていた。まるで市場のようにコスメ商品が寄せ集められている人気コスメ専門店のHARMAYとのコラボキャンペーンは、多数の女性消費者に向けたアピールとして注目を集めた。
グリコ × 未定事件簿
食品メーカー「グリコ」は昨年8月に中国女性向け人気ゲーム「未定事件簿」とコラボし、グリコのお菓子とゲームのストラップ、ハガキが内包されたギフトボックスをネット上で販売した。また、深センと南京ではアリババ傘下の生鮮食品スーパー「フーマー(盒馬)」を通して、コラボキャンペーンを打ち出した。

「原神」の制作会社「miHoYo」による女性向け恋愛ミステリーゲームの未定事件簿、魅力的な男性キャラクターが多くの女性ファンを呼び寄せてきた。SNSに上げられたグリコとのコラボのプロモーション投稿には3万件以上のいいねを獲得しており、ギフトボックスを買い求めるファンのコメントが並んでいた。
グリコはほかにも「サンリオ」や「ちびまる子ちゃん」「ポケモン」と現地で幅広くIPコラボを手掛けている。
SK-II × 大白兎
日本の化粧水ブランド「SK-II」と中国国民的ミルクキャンディーブランド「大白兎奶糖(以下大白兎)」がうさぎ年を迎える昨年の年末にコラボを果たし、特別コラボ化粧水とお年玉袋を打ち出した。英語の「II(two)」と中国語のウサギ「兔(tù)」は発音が似ており、両方をかけた言葉遊びのコラボともいえる。

2022年の年末では「ローソン」や「コカコーラ」などのブランドによる新年祝いのIPコラボが急増し、SK-IIも例年通り干支をテーマとしたコラボを進めた。大白兎は現地の消費者にとって思い入れのある老舗ブランドであり、うさぎ年コラボとしては理想的といえる。
サントリー烏龍茶 × ティムホートンズ
サントリーの代表商品の一つである「烏龍茶(ウーロン茶)」がカナダのカフェチェーン大手「ティムホートンズ(以下ティムズ)」とコラボし、中国の新学期シーズンである9月に烏龍茶一箱とティムズの無料ドリンク券をゲットできるキャンペーンを打ち出した。

また、ティムズの店舗にてお茶が含まれているドリンクを注文するとコラボグッズとしてカップカバーをゲットすることができる。日本未進出のティムホートンだが、2019年上海店舗オープンを足がかりに中国進出を果たし、現地の人気を受けて急速に成長している。烏龍茶とのコラボはその意外性からREDで注目を集め、コラボ装飾店舗を訪れた写真を投稿し、数千いいねを獲得したユーザーが散見していた。
UHA × CORNER CONE GELATO
昨年9月に日本製菓会社「UHA」と上海の人気手作りアイスクリーム店「CORNER CONE GELATO」がコラボし、UHAの人気グミ「コロロ」をイメージとしてデコレーションされたモモ味とグレープ味の2種類のアイスクリームが打ち出された。アイスクリーム店は上海の人気観光スポット・武康大楼の近くにあり、SNS上では同スポットを背景にアイスクリームを撮影した投稿が多く見られた。

UHAは、ほかに人気現地の火鍋チェーン「吼堂老火鍋」とのコラボや、米アニメショーン映画「ミニオンズ」とのコラボを展開しており、様々なIPを通して中国消費者へのアプローチを図っている。
まとめ
中国市場において日本のIPは高い人気を誇っており、コラボの相性からも日本IPとコラボする日本ブランドは多く見られる。その一方で、近年ではZ世代の間で中国IPの人気が上昇しており、現地の人気ゲームやブランドとコラボし、トレンドを敏感に捉えたブランドも見られた。ポテンシャルを秘めている中国市場のIPコラボについて、チャイトピは引き続き注目していきたい。

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