中国「ライブコマースの女王」と称されるviyaがネットから姿を消してから1年半が過ぎた。
かつて「独身の日」セールで83億元(約1,577億円)を売り上げた彼女は、2021年に脱税が発覚。これにより、当局に13.4億元(238億円)の巨額罰金を課され、当時中国で大きな話題となったのは言うまでもないだろう。
この脱税問題は彼女だけでなく、同じくアリババ・タオバオで活躍し、売上3位を保ってきたCherie(雪梨)も個人所得を複数の会社の収入として申告し、脱税したとして、当局に6,555万元(約11億円)の罰金を科された。
この件は罰金だけに留まらず、SNSを含む二人が活動する全てのプラットフォームからアカウントを凍結され、一夜にしてネットから姿を消したのである。
超人気インフルエンサーから転落して一年以上が過ぎた現在、二人はどうなっているのだろうか?
インフルエンサーから企業家へ転身
当時、所定の期間内に罰金を支払うことができない場合は、法律に従って刑事責任も問われるとされていたが、結果からみると、二人は巨額罰金を期間内に支払ったようだ。
一見スケールが大きすぎる罰金額だが、百万以上のフォロワーを有し、百億円単位のお金を動かすような人たちであったため、この金額を支払えたのも不思議ではない。
消息を絶っていた二人であるが、最近不動産への投資が報道された。表舞台から消え、会社を経営する一企業家として転身を遂げたようだ。
Cherie(雪梨)が会長を務める「宸帆」は不動産会社と契約し、杭州でEC産業基地の建設を開始。
viyaの後ろにある会社「謙尋」も、会社の本部建設用地として、2,200万元(約4億円)で杭州の1.6万平米の土地を購入。さらに、viyaと彼女の夫は以前からコンパクト家電メーカーや、スキンケアメーカーへの投資も行っている。
かつてインフルエンサーとして活躍した実績もあり、表舞台から消えても、二人が主導するビジネスの拡大は止まらないようだ。
別アカウントを立ち上げ、タオバオでの影響力を維持
入れ替りの激しい中国インフルエンサー業界において、一度転落したら再び影響力を取り戻すのは至難の業だと思われたが、以下の事例を見ると、そうでもないようだ。
今年、独身の日セールに匹敵する年中セールイベント618の予約販売では、タオバオライブで売上1億元(約20億円)を超えたインフルエンサーのうち、従来の「口紅の王子」こと李佳琦(Austin)に次いで「蜜蜂惊喜社」、「香菇来了」という2つのアカウントが目立っていた。
実はこの「蜜蜂惊喜社」がviya系で、「香菇来了」はCherie系だとして知られている。登場するライバーの何人かは以前viya、Cherieの助手を務めていた者であり、脱税事件で本人の復帰が難しいものの、このような形で影響力を維持している。
アカウントを凍結され、いっきにフォロワーを失ったかと思いきや、そうではない。
彼女ら2人は脱税事件後、すぐに新しいアカウントを立ち上げ、かつて蓄積してきたファン、クライアントのリソースをそこへ誘導したのである。これにより、瞬く間に100万以上のファンを集め、現在「蜜蜂惊喜社」には777万、「香菇来了」には815万のフォロワーがいる状態だ。
9,200万フォロワーを有するviyaの最盛期と比べると、アカウント凍結の影響が著しく見えるが、現在の販売規模では、タオバオのトップ3位を保っている。
ブランド側の反応を見ると、脱税騒ぎによる不信感は特になく、2人に大勢のフォロワーがいる限り、ブランドは連携を続けるだろう。
ただ、現在はトップライバーがライブコマースを制覇する時代が終わり、リスクヘッジのため、各社で単一ライバーに依存するのではなく、新たなライバーの育成にリソースを投入したり、ブランドがライバーを起用せず、自社でライブ配信を行ったりしている。
実際に口紅王子Austinも自分がライブ配信に出る時間を減らし、個人の存在感を下げていく行動が見られる状態だ。
今後の中国ライブコマースはどうなっていくのか?引き続き、追っていきたい。
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