ゼロコロナ政策終了後の中国EV市場は、戻り切らない消費回復の影響を受けていた。中国国家統計局によると、今年1~3月期では自動車製造業の利益総額は819億元(約1兆6,000億円)と前年同期比24%の減少を見せた。
順調に納車台数を伸ばし、増収を果たしたメーカーもあるものの、減収や赤字額拡大など苦戦しているメーカーもあった。
チャイトピは、日本でも注目されている中国のEVメーカー4社の1~3月期決算の状況を分析してみました。
BYD
売上高:1,202億元(約2兆4,000億円) 前年同期比80%増加
純利益:41億元(約820億円) 前年同期比411%増加
EV販売台数:552,076台 前年同期比93%増加
中国EVメーカー大手のBYDは前年同期比で大幅な増収増益を果たした。昨年3月に純ガソリン車の生産を終了させ、EV事業に専念して以降、同社は急速な成長を遂げている。
EV販売台数も前年比で約2倍増加しており、調査会社カウンターポイント・テクノロジー・マーケット・リサーチによると、同四半期における世界EV及びPHEV(プラグインハイブリッド車)販売台数のグループ別シェアではBYDがテスラを抑えて一位となった。また、同社は2023年度の納車台数目標として前年比6割増の300万台を目指すと発表した。しかし、中国政府のEV補助金政策の終了とバッテリー原材料価格の高騰により、今年1月にBYDは一部モデルの値上げを実行した。個人消費が回復しきっていない中国市場で、値上げが販売台数に与える影響に懸念が残る。
BYDは海外市場の開拓に力を入れており、今年1月には日本市場に進出し、SUV「ATTO 3」の販売をスタートさせた。年内にはモデルを3種類にまで増やし、2025年には日本で100店舗以上を展開する計画である。同社はさらにフランスやオランダ、ドイツなどの欧州諸国にも足を伸ばし、現地におけるEV販売や工場設立を押し進めている。自動車大国も含まれる世界各国で、同社のEV事業がどこまで成長するかに注目が集まっている。
新興EVメーカー3社
① NIO
売上高:107億元(約2,100億円) 前年同期比8%増加、市場予想を下回った
純損失:48億元(約960億円) 前年同期比163%拡大
納車台数:31,041台 前年同期比21%増加
メイン収入となるEV販売収入は92億元(約1,800億円)と前年同期比で減収しており、最安モデルである「ET5」の納車台数が全体を占める割合の増加に影響を受けた。また、バッテリーのコスト増大も重なり、EV販売の粗利率は前年の18.1%から5.1%に減少していた。
一方で、同社EVの保有者数増加に伴ってアクセサリー販売やメンテナンスサービスが好調を見せており、その他収入は15億元(約300億円)と前年同期比118%増加している。全体売上高の増加を支える主因と見られる。
同社は5月に新モデル「ES6」を打ち出し、ラインナップの拡充を進める傍らでEV充電網の展開にも注力しており、6月25日時点で1500カ所にバッテリー交換ステーションを設置している。3分で完了するバッテリー交換の利便性は、同社にとってEV充電インフラ市場で戦う競争力となる。
② Xpeng
売上高:40億元(約800億円) 前年同期比46%減少、市場予想を下回った
純損失:23億元(約460億円) 前年同期比37%拡大
納車台数:18,230台 前年同期比47%減少
納車台数の減少とEV補助金政策の終了がEV販売収入に響き、減収及び赤字額拡大につながった。補助金政策が終了したことに加えて、テスラを始めとするEVメーカーによる値引き合戦にXpengも参戦したことで、EV販売の粗利率は前年の10.4%からマイナス2.5%に転落した。同社の主力モデルである「P7」はテスラの「Model 3」に対抗する形で打ち出された製品のため、後者の値下げの影響を濃く受けた。
決算報告書の発表後に、Xpengの米上場株は一時11%の下落を見せた。
事業改善に向けて、同社は販売台数の増加と市場シェアの拡大を目指し、組織調整や地方都市における事業拡大に注力していると示した。また、コスト削減にも力を入れており、今四半期においても販売及び一般管理費が前年同期比16%の減少を見せた。
③ Li Auto
売上高:188億元(約3,700億円) 前年同期比97%増加、市場予想を上回った
純利益:9億2,967万元(約185億円) 前年より黒字転換
納車台数:52,584台 前年同期比66%増加
売上高と納車台数において、3社の中ではトップを記録した。また、純利益においても唯一黒字化を達成した。市場予想を上回る大幅な増収を受けて、決算発表後に同社の株価は一時6%上昇した。
同社はかつての単一モデル販売から切り替えて、新モデル「L9」や「L8」を次々と打ち出し、製品のバリエーションと価格帯を拡げた。競合が研究開発に力を注ぎ、新たなモデルを次々と打ち出している中で、同社も事業戦略を見直したと考えられる。結果的に納車台数は増加し続けており、4~6月期に入っても納車台数は持続的な増加を見せていた。
まとめ
日本市場にも進出し、世界範囲でEV事業の版図を広げているBYDは今四半期でも強い成長を見せていた。新興EVメーカー3社ではNIOが増収を達成した一方で、赤字額の拡大を抑えることができなかった。Xpengの減収続きと対照的に、Li Autoは右肩上がりの業績を記録した。
補助金政策の終了、バッテリー原材料価格の高騰、値引き合戦の過熱が今四半期の中国EV市場に大きな影響を与えた。
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