今月初めに、中国EC大手であるアリババの傘下直営ECサービス「猫享」が9月30日をもって終了になると発表した。2022年2月に運営がスタートしてから、約1年半で事業が打ち切られたことになり、市場競争の激しさを物語っていた

▲ 猫享サービス終了の告知(筆者よりキャプチャ)

同サービスは当時、直営ECに専念したライバル社の「京東(JD)」に対抗する形で打ち出された。2021年から京東はアパレルや日用品などの商品収入の伸びが顕著となり、同分野に強みを持つアリババにプレッシャーをかけていた。そうした中で、アリババは猫享を打ち出し、京東が強みを持つデジタル製品を皮切りに食品、コスメへと商品カテゴリーを増やしていった。

▲ 猫享で販売されている商品の数々(筆者よりキャプチャ)

しかしながら、業績上めぼしい成果は見られず、京東などの競合他社にとって脅威になることはなかった。

さらに、中国版TikTokとも称される「Douyin(ドウイン)」のEC事業拡大など競争激化が止まらず、個人消費も冷え込んでいる中で、アリババのEC事業全体が低迷を見せていた。現地メディアの報道によると、アリババ創業者であるジャック・マー氏は今年5月下旬の社内交流会にて、事業の方向性として「タオバオ」「ユーザー」「インターネット」の3つに立ち返ることを強調した。こうした背景の下、猫享のサービス終了はアリババがリソースの集中を図っているとも考えられる。

アリババEC事業の発展について、今後も注目していきたい。

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