中国経済の不安が高まる中、景気回復の鍵を握る個人消費はどうなっているのだろうか。

今回、筆者は8月の最新データをもとに、中国消費回復の見通しや、中国へ進出した海外企業の状況を探った。

消費回復の全体的な遅れ

ゼロコロナ政策の廃止後、中国の主要消費指標である「社会消費財の小売額」の回復は一時的に予想を上回る伸びを示したが、5月から3ヶ月連続で伸び幅が縮小し、成長ペースが鈍化している。

2022 年 4 月に上海でのロックダウン開始以降、消費者マインドを示す「消費者信頼感指数」に関しても低迷が続いており、100ポイント(楽観・悲観の分岐点)を下回っている。今年2月に好転したものの、100ポイントには届かず、4月になってまた下落しているような状態だ。

これは、消費に対する国民の警戒心の表れで、貯蓄志向が高まっていることが読み取れる。家計の預金総額は、6月末時点で132兆2,000億元(約2,635兆円)を記録。今年上半期には12兆元増と、10年ぶりの高い伸びを示した。

サービス分野での好転

全体的な消費低迷とは対象的に、一部の指標で改善の動きが見られる。

中国国家統計局は悪化し続けている若者失業率のデータ発表を中止した一方、「サービス小売額」という新たな指標を8月から月次ベースで発表を開始した。これは、経済指標がこぞって低調している中で良い指標をアピールするためだろう。

有形商品の販売状況を示す「社会消費財小売額」と比べ、この「サービス小売額」は交通、宿泊、飲食、娯楽など、サービスの小売額を示している。

1~7月のサービス小売額を見てみると、夏季旅行や、娯楽関連消費の増加により、交通、宿泊、飲食などのサービスの売上が増加したことで前年比20.3%増加しており、伸び幅は商品販売の小売額を超えている。

このように、中国消費者はモノ消費に対して慎重になっているが、自分を喜ばせる旅行や娯楽などサービスへのコト消費を増やしていることがわかる。

国家統計局の国民1人当たりの消費支出に関するデータによると、サービス消費の割合は40%を占めている。

一部のカテゴリで海外ブランドがシェアを拡大

景気減速を懸念し、多くの海外企業が中国市場投資を見合わせる中、実際に現地進出した一部の海外ブランドは、直近の決算で好調な業績を記録している。

コンサル会社のマッキンゼーのレポートによると、過去数年はスポーツウェアなどのカテゴリにおいて中国企業がシェアを拡大してきたが、今年に入り、グローバル企業のトップが相次いで中国を訪問し、中国市場への投入拡大を宣言した後、業績は回復傾向にある。

▲Tmallのトップ20ブランドのシェア変化(出典:百観)

今年上半期Tmallのスポーツウェア、コスメ、ベビー向け粉ミルクのカテゴリでは、トップ20ブランドのうち、海外ブランドのシェアが50%を超え、特にコスメ分野では、海外ブランドのシェアが80%まで拡大している。

しかし、中国消費者の国産ブランドへの好感度が日々高まる中、これらのカテゴリにおいて海外ブランドのシェア拡大傾向は継続していくか、それとも一次的なものなのか、しばらく様子を見る必要があるようだ。

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中国景気減速に加え、ここ数ヶ月の経済指標が低調であることから、現在の中国市場は悲観的に見られることが多い。しかし、マイナスな環境に置かれても、現地の情報収集に注力し、将来に向けた戦略改善を行うことこそが、この変動の激しい市場で生き残り、勝ち上がるためのカギとなるだろう。


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