コンビニ大手の「ローソン(LAWSON)」は、中国市場で急加速ともいえる成長を見せている。今年の8月4日に同社の店舗数は6000店舗を突破し、現地で事業を展開する日系コンビニの中では最大規模の店舗数を誇っている。また、同社の3~5月期決算によると海外事業利益は2億1,200万円と前年同期より黒字転換しており、全体の約9割を占める中国店舗がコロナ禍の打撃から回復したことなどが関係していた。
中国市場における事業好調の裏にある同社の取り組みを見ていきたい。
地元企業との提携
1996年に中国市場進出を果たして以来、ローソンは現地における出店に力を注いできた。2014年以降は「メガフランチャイズ契約」や「エリアライセンス契約」を推進し、地元のパートナー企業と共同出店することで、同社の店舗数は近年急増している。人脈やサプライチェーン、販売のノウハウを有する「中百集団」や「超市発」といった現地の大手小売企業と提携することには、未開拓の地域における迅速な出店を可能にするというメリットがある。
そうした取り組みにより、2022年7月からの約1年間で同社はさらに1000店舗を出店した。平均すると1日あたり2~3店舗を打ち出していることになる。また、中国連鎖経営協会(CCFA)が公開した「2022年中国コンビニTOP100」によると、同社は2022年の時点で5641店舗と中国で5番目に店舗数の多いチェーンとなった。現地の大手コンビニチェーンに続いて、TOP5にランクインしている唯一の日系企業である。
ローソンは中国店舗数を2025年までに1万店に引き上げる目標を掲げており、これは現在の出店ペースをさらに加速させなければならないことを意味している。
地方進出に注力
出店ペースと同じく、ローソンが中国市場における事業展開で重視しているもう一つのポイントは地方への進出である。1996年に上海で第一号店をオープンしてから、ローソンは現地で大都市の代名詞でもある一線都市と二線都市を中心に出店してきた。しかし、近年では湖南・岳陽や河北・唐山といった三線都市にも足を伸ばし、地方都市における事業展開を加速させている。
地方に注力する背景には、ライバル社たちとの競争激化が関係していると思われる。ライバル社がひしめく数少ない大都市よりも、ポテンシャルを秘めている地方都市への出店はさらなる事業成長を見込める。
また、現地大手小売企業と提携することもローソンの地方進出を後押ししている。
アニメやゲームとのコラボ
消費の主力でもあるZ世代の若者を獲得し、ロイヤリティを向上させる施策の一つとして、ローソンは頻繁に人気アニメやゲームといったコンテンツとのコラボキャンペーンを打ち出している。現地で人気ゲームやアニメとのコラボの数々は、若者たちから高い支持を得ている。
■過去にコラボしたコンテンツの一部:
- すずめの戸締まり(日本アニメ映画)
- 呪術廻戦(日本アニメ)
- SPY×FAMILY(日本アニメ)
- ファイナルファンタジーXIV(日本ゲーム)
- 第五人格(中国ゲーム)
- 原神(中国ゲーム)
- 王者栄耀(中国ゲーム)
- 洛天依(中国ボーカロイド歌手)
今年3月に日本アニメーション映画『すずめの戸締まり』は中国でも上映され、現地で大ヒットを記録した。同時期にローソンは本作品とのコラボを打ち出し、一部店舗でポストカードやトートバッグといったコラボ商品が売り切れるほどの人気ぶりを見せていた。
また、写真映えするコラボ装飾の店舗はファンにとって魅力的であり、ウェイボー(weibo)やRED(小紅書)といったSNSに投稿する写真を撮るために店舗を訪れる人も多い。結果的に、若者たちのローソンに対する認知度と好感を引き上げ、顧客の獲得につながったといえる。
最後に
中国1万店に向かって突進するローソンだが、その壁として現地で3万店近くを構えている「美宜佳」などの中国コンビニチェーン大手が立ちはだかっている。また、同じ日系企業であるファミリーマートやセブンイレブンとの競争にも警戒しなければならない。ファミリーマートは商品やサービスの充実化を図っており、セブンイレブンは地方都市の進出に力を入れている。今後、中国コンビニチェーン市場における競争の激化は免れない。