近年、中国では米ブランド「クロックス」の穴の空いた「クロックスサンダル」が人気を見せている。今年4月では、ECプラットフォーム「タオバオ」と「Tmall(天猫)」におけるクロックスの売り上げは7965億元(約16億円)に上り、前年同月比で152%も増加していた(市場調査会社・魔鏡市場情報より)。また、中国版インスタとも称される「RED(小紅書)」などの現地SNSでは関連の投稿が急増して、愛好者らによるコミュニティも現れた。外出時にクロックスを履く者もいれば、会社や家の中でスリッパ代わりに履く者もおり、「一度履けば、ほかの靴を履くことがなくなる」と持ち上げられるほど、今年の一大トレンド商品になっている。
クロックスは十数年以上も世界各国で販売され、中国市場に進出した当初は一時期ブレイクを果たしたもの、時が経つのにつれて鳴りを潜めるようになった。しかし、近年では中国大人気女優の楊冪(ヤン・ミー)の宣伝などにより再ブレイクを果たしている。今年4月にはクロックスのアンバサダーとして楊冪が中国トップライバー・李佳琦(Austin)のライブ配信に登場したことが、現地SNSのトレンドランキングに上がっていた。
著名人の宣伝効果のほかに、中国でクロックスが再ブレイクした理由は以下の3つと考えられる:
①機能性
現地の消費者らに人気な理由の一つは、その履き心地良さにある。クロックスはやわらかい素材でいくつもの通気孔があるため、歩きやすい上に内部がむれない。また、「靴ひもがない」「水に強い」などの利点を持っている。そのため、履くのに手間はかからず、簡単に洗うことができる。こうした様々な機能性が消費のニーズにフィットした。
②デコレーションの楽しさ
クロックスのもう一つの魅力は多種多様な飾りアイテム、「ジビッツ」にある。アルファベットやサッカーボールなどのジビッツもあれば、「ポケモン」や「スヌーピー」といったキャラクターのジビッツもあり、穴に取り付けることで自由にカスタマイズすることができる。
こうしたデコレーションの楽しさに消費者は惹かれ、SNSでは関連の投稿に「かわいい」「欲しい」といったコメントが多く寄せられていた。また、タオバオでは7月にジビッツの取引件数が前年同月比で118%も増加していた。2010年に米雑誌の『TIME(タイム)』から”醜い”と酷評され、中国でも“ダサい”などとの意見が挙がっていたクロックスだが、ジビッツを通して“かわいい”魅力を放つようになった。
③コロナ感染拡大による外出制限
中国でクロックスがブームになった背景として、新型コロナウイルスの感染拡大が関係していると思われる。在宅勤務など外出する機会が減った中で、消費者はデザイン性よりも手軽で機能性の高いクロックスに視線を向けた。人々がより商品価格に敏感になり、コストパフォーマンスを重視していることも原因の一つだと考えられる。
最後に
中国クロックスブームは予想以上の盛り上がりを見せ、あまりの人気ぶりに偽物ブランドが出現し、1300万元(約3億円)以上を売り上げるも摘発されたとの報道もあった。その一方で、クロックスの危険性への注意喚起も人々の間で話題になっている。クロックスは素材の問題により、エスカレータではすき間に足が巻き込まれるなどの事故が起きやすい。そのため、SNSではクロックスも場合によって履き分けることが必要などとのコメントが見られた。
話題が尽きないクロックスブームが今後どこまで続くのか注目していきたい。
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