ルイ・ヴィトンと PDDが絶好調
中国の景気低迷に伴い、国民が消費に対し全体的に慎重になっているが、高価格帯と低価格帯商品へのニーズは増加しており、消費が二極化している。
コロナ禍以降、中国ではコスパの良い商品を求め、「消費降级(消費のダウングレード)」の風潮が広がった。この現象は格安ECのPDD(拼多多)の業績にも反映されており、EC業界が全体的に成長鈍化している状況下においても、同社の直近半年の業績は絶好調である。
1~3月期の売上高は前期比58%増加。競合であるアリババの売上高は前年比2%、京東(JD)は1.4%しか伸ばせなかったのと比べると、PDDの好調ぶりが目立つ。4~6月期決算もその好調を維持し、売上高は前年同期比66%増加。さらに、海外向けの格安ECのTemuも日本を含め多くの国へ進出し、非常に勢いがある状態だ。
また、PDDのほか、仏高級ブランド ルイ・ヴィトン など高級品ブランドも中国の景気不振に影響されず、第2四半期(4~6月)の決算で、中国市場の急回復で全体では前年比17%増売上高を確保した。中国人消費者の高級品に対する消費意欲は、同社の日本市場の業績にも波及している。
また、スマホ市場においては、1~3月の期間中、1,000ドルを超える高級ブランドの販売台数は前年比6%増加し、市場シェアは9%まで拡大した。150ドル以下のローエンド向け格安スマホの販売台数は22%増加し、市場シェアは12%まで拡大している。
一方で、400~599ドルのスマホシェアは1%下落。150~399ドルのスマホのシェアは4%下落し、ミドル向けスマホ販売が低迷している状態だ。
このようにスマホ市場においても、「先端的消費」と「安さ納得消費」に二極化しているようだ。
海外ブランドの動向
中国の消費二極化の背景下において、高級品や先端的技術を持つ外資ブランドが各自の対策を講じた。代表的な対策は以下の2点である。
- 値下げによる販売拡大
- ハイエンド市場にターゲットを絞る
価格を下げて販売を拡大する作戦を取ったブランドについては、米EVメーカーのテスラが代表的である。中国自動車市場全体の不振と現地メーカーとの競争激化を受け、同社は2023年初に上海の工場で現地生産している「モデル3」と「モデルY」の中国市場向け販売価格の大幅な値下げを実施。過去最低価格で販売したことで、中国EV市場に大きな波紋を及ぼした。
値下げにより、テスラの高級ブランドイメージへの打撃も懸念されたが、作戦自体が奏功し、同社の販売台数は大きく成長。そして、BYDなど現地のメーカーもテスラの後を追うように、こぞって値下げしたことで価格戦争が止まらず、これまでのガソリン車メーカーにまで影響が及んでいる。
テスラは利益率が圧迫されても、販売拡大に向け、値下げを優先させると表明し、その後も2度目、3度目の値下げを行った。
一方、テスラの値下げ作戦とは異なり、ラグジュアリーブランドは中国の富裕層にターゲットを絞り、値上げを展開している。高級で希少なイメージを維持し、ブランドの通俗化に歯止めをかけ、リポジショニングを加速する意向だ。
特にルイ・ヴィトン は、2022年から競合他社の先陣を切って世界規模で価格を引き上げ、中国市場においても一部の商品に対して値上げを実施。今年2月に最大20%の値上げを行う見通しが浮上し、値上げ前に商品を購入しようと上海の店舗前には長蛇の列ができたことで話題となった。その他、Chanel、Hermèsなどのハイブランドも中国市場で次々と価格改定を行っている。
中国市場において苦戦する外資系ブランドが増えているだけでなく、さらに消費が二極化する中で、今後は現地ブランドと差別化できるブランド力、製品力が問われる時代となるだろう。
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