最近、中国では白酒(バイジウ)の銘柄である「貴州茅台酒(以下マオタイ酒とする)」の話題が沸騰中。白酒は中国の伝統酒であり、アルコール度数は50%前後のものが多い。その中でも、マオタイ酒は複雑な製造工程と独特な味わいを持つ高級酒として有名である。
9月4日に、中国コーヒーチェーン大手「ラッキンコーヒー」がマオタイ酒とのコラボドリンク「醤香拿鉄(醤香ラテ)」を打ち出し、現地で大きな反響を呼んだ。同ドリンクの中にはマオタイ酒が含まれており(ドリンクのアルコール度数は0.5%)、カップスリーブと紙袋もマオタイ酒のブランドデザインに様変わりしていた。醤香ラテの人気は凄まじく、発売初日で販売数は542万杯、売り上げは1億元(約20億円)を突破し、ラッキンコーヒーが販売する単品の中では最高記録となった。
ネット上では同ドリンクに関する話題が尽きず、「売り切れで買えない」「朝飲んで、午後6時の仕事上がりで車を運転しても平気?」「仕事中に酒を飲んでいることにはならないよね」など様々なコメントが見られた。
マオタイ酒のコラボはこれにとどまらず、16日には米チョコレート大手「Dove(ダヴ)」がマオタイ酒入りのコラボチョコレートを打ち出した。醤香ラテ同様に、Doveのコラボチョコも各販売チャネルで売り切れが続出し、中国ネットスーパー・Tmall Mart(天猫超市)では1分足らずで売り切れるなどの反響ぶりを見せていた。
マオタイ酒が続け様にコラボに身を投じるのは、Z世代である若い消費者層の白酒離れが背景にあると思われる。コンサルティング会社・RIESが中国若者らのお酒事情に対して調査した2022年12月のレポートによると、過去1年間で40%の若者がビールを飲んだのに対して、白酒はわずか9%となった。また、39.6%の若者が好むアルコール度数は10%前後となっており、白酒でよく見られるアルコール度数40%以上を好む者は1.1%ともっとも少ない。
白酒が高濃度のお酒であるだけでなく、中国の「酒局文化(飲みニケーションにあたる)」と強い関連性を持っていることも若者を遠ざける一因である。現地メディア・中国新聞週刊が若者の酒局文化に対する反感を調査したところ、85%の人々が強い反感を示した。
これらの理由に加えて、マオタイ酒が日本円で10万円にも上ることのある高級酒であるため、若者らにとっては手が出しづらいものとなっている。そのため、ラッキンコーヒーやDoveとのコラボは、マオタイ酒にとって若年消費者との接点を増やし、親近感を持たせることにつながる。過去にも、マオタイ酒は一本29元(約590円)のアイスクリームや可愛らしいマスコットキャラを打ち出しており、若者らに積極的にアプローチしているといえる。
マオタイ酒の立て続けのコラボは話題作りに成功し、多大な注目を集めた。しかし、コラボの回数を重ねることで新鮮感は薄れ、徐々に若者らは興味を失っていく。マオタイ酒が今後も人気を継続できるのか、引き続き注目していきたい。
※アイキャッチ画像は中国SNSより
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