8月末から、突如中国で漢方薬局に足を運ぶ若者が急増した。お目当ては中国で古くから親しまれている甘酸っぱい伝統的な飲み物、「酸梅湯(さんめいたん)」である。喉を潤すだけでなく、体内の熱を取る、消化を促すなどの効果が期待されており、夏では定番の飲み物だ。そして、漢方薬局では「烏梅(うばい)」「山楂(さんざし)」「甘草(かんぞう)」といった原材料をじっくり煎じた、出来立ての酸梅湯を味わうことができる。

▲ 漢方薬局で処方される酸梅湯の原材料(中国SNSより

人気の火付け役は、Douyin(中国版TikTok)に投稿された関連動画と思われる。8月29日に、ある動画投稿者が漢方薬局を訪れ、酸梅湯を購入する一連の様子を撮影した動画をアップした。同動画は大きな反響を呼び、記事執筆時点では224万以上のいいねを獲得している。また、現地の大手検索エンジン・百度(バイドゥ)では、29日を境に「酸梅湯」のキーワード検索指数が急増していた。

▲ 百度における「酸梅湯」の検索指数(チャイトピよりキャプチャ)

人気は瞬く間に広がった。現地メディアによると、一部の漢方薬局には酸梅湯を買い求める若者が殺到し、浙江省のとある病院では通販の大量注文でサーバーがダウンする事態も発生した。

漢方薬局で購入できる酸梅湯には、消費者を惹きつける以下のポイントがあった。

  • 無添加であるため、ボトル入りの市販ドリンクよりも健康的と思われる
  • 単価が安く、医療保険が適用される場合もある

そのため、ミルクティーよりも酸梅湯の方が良いといったコメントがネットで見られた

近年、中国の若者たちの間では健康志向が高まっており、無糖・ゼロカロリーなどを謳うドリンクが人気を呼んでいる。漢方薬もそうした背景の中で人気が高まり、過去にも漢方薬コーヒーや漢方薬ミルクティーといったものが打ち出されていた。

また、国潮ブームなどの自国文化を支持する動きが強まっていることも、酸梅湯の人気急上昇を後押ししている。

しかし、酸梅湯の人気が高まる中で、医師らは流行りに乗ってむやみに飲まないように注意を呼びかけた。体質によっては合わない人もいるため、SNSでも酸梅湯の購入に慎重な態度を見せるユーザーが増え始め、徐々にブームも終息を迎えた。

ここ数年の中国では、仕事に追われるなどの理由で運動不足や夜ふかしをする若者が多い。そうした中で、健康問題を抱える者も増えており、注目を集めている。また、ゼロコロナ政策が終了したことによりコロナの罹患率は高まり、処理水問題で放射線物質に敏感になるなど、現地消費者らの健康に対する意識は強まる傾向にあると思われる。今後も消費者らの健康志向が中国市場でどのような影響を与えるのかに注目していきたい。

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