9月10日に中国で“口紅王子”の別称を持つ人気ライブ配信者・李佳琦(Austin)が大炎上してから約1カ月が経ちました。しばらくの間消費者らの憤りは続いたものの、時間の経過とともに、騒動は沈静化の様相を呈している。
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同炎上騒動のその後について見ていきたい。
Austinはライブ配信を続行
謝罪後も、Austinは引き続きライブ配信で商品の紹介に専念しており、炎上騒動によるダメージはあまり見られない。現地メディアの報道によると、炎上後もライブ配信の視聴者数は1000万人以上を記録しており、5万件の商品がたった3秒で売り切れるなどの好調ぶりを見せているという。

問題発言で多くの人々の心証を害したものの、Austinのライブ配信で紹介されるお手頃価格な商品の数々は消費者らにとって魅力的である。本人に対する激しい批判は、逆に高い注目度をもたらした。
フローラシスはイメージ改善に尽力
炎上騒動も支持されるAustinとは対象に、フローラシスは深刻なダメージを被った。現地メディアによると、9月10日時点でフローラシスの通販ショップの1日の売り上げは100~250万元(約2,000~5,000万円)もあったが、騒動の翌日である11日では7.5~10万元(約150~200万円)と9割ほど落ち込んだという。同ブランドは後日反省の意を示した文章を発表し、抽選で1万本のアイブロウペンシルを消費者らに贈るなどとイメージの改善に努めた。消費者らがフローラシスに抱く「商品が高価すぎる」という印象の払拭が、同ブランドにとって目下の急務である。
他社はファン獲得に乗り出す
フローラシスがダメージを受けている中で、シャンプーなどを製造する中国老舗メーカー・蜂花は炎上騒動に乗じてファン獲得に成功している。同社は炎上のきっかけであるフローラシスの1本79元のアイブロウペンシルをネタに、79元のシャンプーセットを打ち出し、話題作りに成功した。

また、「給料が上がっても、上がってなくても、蜂花は値上げをしない」などの謳い文句で、自社の製品がいかに安いかをアピールした動画を投稿し、ひたすら注目度を高めていった。現地メディアによると、同社のDouyin(中国版TikTok)は1日で50万人以上も増え、ライブ配信の視聴者数も激増しているという。格安商品をメインとする同社にとって、商品の値段が批判対象となる今回の炎上騒動は自社を宣伝する絶好のチャンスとなった。
最後に
Austinが引き起こした炎上騒動は自身だけでなく、周りのブランドにも影響を与えた。フローラシスのような大ダメージを受けたブランドもあれば、蜂花のように話題に乗じて消費者へのアピールに成功したブランドもあった。また、消費者らは商品の値段に対する認識を改め、安価な老舗ブランドに目を向け始めている。近づくEC業界の祭典「独身の日(ダブルイレブン)」で、どのような変化がもたらすのかに注目していきたい。
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