中国に進出している日系企業は、北京、上海、広州、深センの四大都市を中心とする沿海都市圏に集中している。これら四大都市は従来、日本人に一番よく知られている中国の都市だったであろう。
しかし、これら四大都市は近年GDPの順位に変化が起き、北京のGDPは上海に追い抜かれのに加え、広州は今年上半期のGDPランキングで初めてトップ4から転落した。
さらに、将来四大都市と肩を並べるとして期待されている「新一級都市」も成長が著しく、注目を浴びている。
中部都市が成長する一方、北方都市が失速
中国の現地経済メディア「第一財経」は2013年より「新一級都市」という概念を提出し、複数の領域で競争優位性のある15都市を「新一級都市」として選出した。
2023年には「商業施設の充実度」、「都市のターミナル性」、「市民の活性度」、「生活様式の多様性」、「将来の可能性」という5つの基準をもとに、成都、重慶、杭州、武漢、蘇州、西安、南京、长沙、天津、鄭州、東莞、青島、昆明、寧波、合肥の15都市が選出された。
そのうち、中国の中部地域に位置する成都が8年連続で新一級都市の首位に選ばれ、重慶が2年連続2位となっている。従来の北京、上海、広州という経済圏に次いで、「成都・重慶」という第4の都市圏が台頭し、中部地区では成長が予想を上回る新興都市が見られた。
今回、新一級都市として台頭した成都は、中央政府が2000年代に開始した西部大開発政策の恩恵を受け、経済が急激に発展。中国の中西地域に展開するグローバル企業も成都で本部を設立したことも成都の経済発展に繋がった。また、重慶市は1997年に内陸部振興のため四川省から独立。直轄市に昇格し、国家の投資を受けたことで、経済が発展した。
このように成長してきた新興都市もある一方、瀋陽や大連といった日本人にも馴染みのある北方都市が新一級都市ランキングから転落し、二級都市となっている。
瀋陽と大連は同じく遼寧省の都市で、10年前には新一級都市の9位と11位であったが、その後、大連は2018年、瀋陽は2022年からランキングから姿を消した。
遼寧省は東北地域の重化学工業基地であり、装備製造業の発達により、経済力を伸ばして来たが、工業に依存する発展モデルの弊害や、環境汚染、および人口の流出などの問題が顕著となり、活力を失いつつある現実に直面している。
日本企業の中国進出地域
中国へ進出した日本企業の多くは、東部の沿海経済圏に集中している。帝国データバンクによると、2022年には上海にある日本企業は6,028社と最多で、2位の江蘇省と大きな差を付けた。また、瀋陽や大連がある遼寧省は1,337社で4位である。これと比べ、四川省は105社で、成都・重慶といった新興の内陸都市への進出はまだ少ない。
増減社数から見ると、2022年は大都市部での減少が顕著に現れている。上海は272社で最も減少し、沿海都市と隣接する安徽省が最も増加した。しかし、それでも成都・重慶などの都市圏への進出はまだ少ない状態である。
中国都市の経済力、成長性は過去の30年間で大きく変化してきたが、日本企業の進出地域は今も沿海経済圏に集中している。今の中国の流れを鑑みると、商業施設が充実し、市民の活性度が高いだけでなく、将来が期待されている内陸の新興都市にも目を向けてみるべきかもしれない。
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