今年8月下旬に、中国コーヒーチェーン「COTTI COFFEE(コッティコーヒー)」が日本上陸を果たした。9月下旬には日本2号店もオープンし、急速な店舗展開を見せている。

COTTI COFFEEは第二のラッキンコーヒー(Luckin Coffee)とも呼ばれ、中国市場では店舗数がスターバックスコーヒーに追いつきつつある。現地で多くの注目を集める同ブランドの成長を振り返り、その特徴について見ていきたい。

10カ月で5,000店舗と急拡大

COTTI COFFEEは2022年10月末に第一号店が打ち出された新興コーヒーチェーンである。ラッキンコーヒーの創始者メンバーである陸正耀や銭治亜、そして元ラッキンコーヒーのチームメンバーらによって立ち上げられた。

陸正耀と銭治亜はラッキンコーヒーの粉飾決算事件を境目にラッキンコーヒーから離れた。しかし、ラッキンコーヒーはその後、組織再編や債務整理などを経て回復を果たし、店舗数が1万店を突破するなどの好調ぶりを見せていた。

そのため、両者が再びコーヒーチェーンを立ち上げたのは、ラッキンコーヒーの成功を再現するためとの見方が上がっていた。

実際に、COTTI COFFEEはラッキンコーヒーと非常に似ている。立ち上げ当初から9.9元(約200円)や8.8元(約180円)の格安コーヒーのキャンペーンを頻繁に行い、採算度外視で大量のクーポンを配布してきた。また、テイクアウト型の小店舗などをメインに出店し続けて、1号店をオープンしてからたった10カ月で5000店舗を突破し、その急成長ぶりは話題を引き起こした。出店は中国国内に止まらず、海外市場にも及んでおり、今年8月には韓国にて海外1号店を打ち出した。

こうした破格な値段で消費者を引き寄せる低価格戦略と急速な開店スピードは昔のラッキンコーヒーを彷彿とさせる。

さらに、「生椰拿鉄(ココナッツラテ)」や「生酪拿鉄(チーズラテ)」といったラッキンコーヒーのヒット商品もCOTTI COFFEEのラインナップで見られる。似たような商品が手軽に買えるとなると、消費者はおのずと安い方へと流れてしまう。

マーケティングにおいても、宣伝に著名人を起用し、現地の大人気ゲーム「王者栄耀(Honor of Kings)」とコラボすることで存在感を高めてきた。

▲ 王者栄耀とのコラボドリンク(中国SNSより

盛り上がりを見せているCOTTI COFFEEに対して、ラッキンコーヒーも対抗するかのように9.9元の割引キャンペーンを打ち出し、値引き合戦に身を投じた。両ブランドの対抗は強まり、ラッキンコーヒーのあるところにCOTTI COFFEEありといった様相を呈していた。

▲ COTTI COFFEEに隣り合わせで出店するラッキンコーヒー(中国SNSより

事業が回復し、コーヒーチェーン市場でようやく地盤を固めてきたラッキンコーヒーにとって、自身に似たCOTTI COFFEEの追い上げは脅威になっていた。

急成長するも見通しは不透明

急激的な成長を遂げている一方で、同社の経営に対する懸念も浮き上がった。

現地メディアの報道によると、今年4月にCOTTI COFFEEが値上げを実行してから、売り上げは減少したという。破格な値段で消費者らを引きつけたものの、どのように引き止めるかが問題になっていた。同社が収益化するにはこの課題解決は欠かせない。

また、いくつかの店舗では原材料不足で1週間も商品の販売を再開できない事態が起き、サプライチェーンの不安定さが懸念されていた。COTTI COFFEEが今年7月に初めてサプライチェーン拠点を設立したことからも、同社のサプライチェーンの構築にはまだ長い道のりがあると思われた。

急速な出店で事業規模を拡大させている一方で、店舗の管理体制に統一感は感じられない。同社は今年9月に打ち出した「米乳拿鉄(ライスミルクラテ)」の宣伝文に書かれている原材料名が店舗別に違っていたことから、消費者からの批判を受けていた。

ブランドとしての競争力の面においても、まだ改善の余地があるように思われる。

ラッキンコーヒーはココナッツラテで爆発的なヒットを記録し、他社との差別化に成功した。その後もヒット商品の開発に余念がなく、チーズラテや白酒入りラテなど次々と大ヒット商品の開発に成功した。こうしたオリジナル商品によるラインナップは多くのファンを生み、同社の競争力の基盤を築き上げた。

一方で、COTTI COFFEEではブランドを支えする看板商品が乏しい。9月に打ち出した独自のライスミルクラテも話題づくりに成功したものの、味に対する評価が別れており、大ヒットまであと一歩といった感が否めない。

▲ COTTI COFFEEのライスミルクラテ(中国SNSより

最後に

COTTI COFFEEは破竹の勢いで店舗数を増やし、日本を含む海外市場にも進出するなどアグレッシブな事業展開を見せ、脚光を浴びている。しかし、中国市場では年々コーヒーチェーンらによる競争は激化しており、新参者である同社に対してラッキンコーヒーは警戒の意を示し、値引き合戦などと真っ向勝負を挑んでいる。また、サプライチェーンの構築やオリジナル商品の開発など、急を要する様々な課題にCOTTI COFFEEは直面している。

期待の新星としてスターバックスやラッキンコーヒーに匹敵するチェーンとなるか、はたまた競争に敗れて散りゆくか、引き続き注目していきたい。


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