中国製EVは各市場で存在感を高め、日系や欧州系の自動車メーカーを尻目に、EVの販売台数を伸ばしてきた。その代表格であるBYD(比亚迪)の今年上半期の売上高は、73%増の2,601億元(約5兆3,000円)で、純利益は前年同期比3倍の109億元(約2,200億円)となり、成長に拍車がかかっている。
一方、新興EVメーカーは苦戦を強いられ、かつて「中国版テスラ」として期待が寄せられた複数のメーカーが倒産に追い込まれている状態だ。激しい競争の中で、この市場で戦うメーカーの淘汰が加速している。
新興EVメーカーの数がピーク期から激減
2014年前後から中国EV業界は創業ブームを迎え、2018年のピーク期に企業数は400社を超えた。しかし、2019年からEVバブルが崩壊し始めたことにより、多くの新興EVが淘汰される結果となった。現在、生産・販売を継続している新興メーカーは、わずか10社前後となっている。
さらに今年に入り、中国EV市場の競争が一層激化したことで、2015年に設立した「威馬汽車(WM Motor)」の店舗は大量に閉店し、給料未払いなど経営危機が報道された後、事業再編を申請した。
同社は設立当時バイドゥ、テンセント、そして投資大手のセコイア・キャピタル・チャイナなどから出資を受け、注目を浴びていたが、2019年から21年にかけて3年連続の赤字となっており、累計赤字は174億元(約3,500億円)に達した。
また、威馬汽車のほか、拜騰汽車、奇点汽車、恒大汽車など、設立してから投資家の注目を集めた新興メーカーの多くが倒産や経営危機に陥っている。
伝統自動車大手との競争が激化
競争激化により、淘汰が進む中国EV業界において、上場を果たした新興トップ3社NIO、Xpeng、Li Autoも生き残るために苦戦し、少しも油断できない状態にある。
2022年、新エネ車乗用車の販売台数トップ15のうち、新興メーカーは5社ランクインした。そのうち哪吒(Neta)が8位で、Li Auto、NIO、Xpengはそれぞれ9、11、12位だった。
新興EV企業は以前から巨額投資を獲得し注目を集めていたが、販売台数上位は中国伝統自動車メーカーが打ち出したEV車となっている。BYDの市場シェアは31.7%で2位と大差をつけており、ジーリー、広州自動車などの中国伝統自動車大手もサプライチェーン、生産力などの面での優位性を活かし、EV車の研究開発に注力したことで、販売台数を伸ばしてきた。
新興メーカーは中国で最初にEV風潮を起こしたものの、今後は収益化の圧力や、伝統自動車大手との競争に直面し、生き残るための激しい戦いを強いられていくだろう。
アイキャッチ写真:筆者より撮影
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