近年の中国では、IPコラボレーションが大いに盛り上がっている。IP(Intellectual Property)とは知的財産ことであり、中国ではアニメやマンガのキャラクターはもちろん、映画や本、著名人、ブランドまでもがその対象に含まれる。売り上げアップや新規顧客の獲得などの効果が期待されるため、IPコラボに注力するブランドは少なくない。
化粧品業界でもそうしたコラボは頻繁に行われており、現地メディアによると、今年1~7月では少なくとも70件以上の関連コラボが打ち出された。
今回、チャイトピは今年に入って打ち出されたコラボ商品の数々について、その特徴と人気の理由をまとめてご紹介したい。
CN Formulator × ひつじのショーン
中国スキンケアブランド「菜鳥和配方師(CN Formulator)」がイギリスの大人気アニメーション「ひつじのショーン」とコラボを果たし、限定版リップ美容液を打ち出した。作中に登場するひつじの可愛らしいキャップにシールがついており、ファンからの好評を得ている。
CN Formulatorは2019年に打ち出された新興ブランドであり、ニキビケアやアンチエイジング向けの化粧品で高い人気を獲得している。現地メディアの報道によると、設立1年目でGMV(流通取引総額)は一千万元(約2億円)を超えた。
ひつじのショーンは中国や日本を含む世界170カ国で多くのファンを擁しているストップモーション・アニメーション作品である。主人公ショーンとその仲間たちの愉快な農場生活を描いたものであり、かわいい見た目のキャラクターたちは中国で多くの人々をトリコにしている。CN Formulator以外にも、現地ティーブランドLELECHA(楽楽茶)とコラボし、限定版トートバッグなどがついたセットが打ち出され、人気を集めている。
パーフェクトダイアリー × マクダル
中国コスメブランド「Perfect Diary(パーフェクトダイアリー)」が、現地で人気なアニメシリーズ「マクダル(麦兜)」とコラボを果たした。主人公のマクダルなどの作中のキャラクターをモチーフとした6種類のリップグロスとアイシャドウパレットが打ち出され、注目を集めた。2000年代に公開された小豚のマクダルを主人公としたアニメ映画は、当時の子どもたちから愛されており、今でも多くの人々にとっては愛着ある懐かしい作品である。
パーフェクトダイアリーは2017年に設立され、かつては欧米の大手コスメブランドにも引けを取らない高い人気を誇っていた。しかし、近年では競争激化などの影響もあり、成長にかげりが出ている。
PinkBear × サンリオ
中国コスメブランド「PinkBear(皮克熊)」は、サンリオの人気キャラクター「クロミ」と「マイメロディ」とコラボした化粧品シリーズを打ち出した。クロミは黒、マイメロディはピンクとぞれぞれのキャラクターに沿ったアイシャドゥパレットやリップグロスなどが登場し、ファンらの心をつかんだ。2022年にPinkBearはサンリオとのコラボを実現しており、今年はラインナップを充実させたリニューアル版のコラボ商品を打ち出した。
ハローキティやシナモロールだけでなく、クロミとマイメロディもまた現地のファンから愛されているサンリオのキャラクターであり、上海では両キャラクターのテーマレストランやポップアップも打ち出されていた。
キュートな両キャラクターと少女風が特徴的なPinkBearはコラボの相性が良いと言える。2021年に設立された同ブランドは、乙女心をくすぐる愛らしい商品が多く、コラボ相手も韓国アニメに登場するピンク色のビーバー「ルーピー(Loopy)」などのキャラクターが見られた。
LittleOndine × マルチーズ
中国コスメブランド「LittleOndine(小奥汀)」は、犬のマルチーズをモチーフとした韓国の人気キャラクター「マルチーズ(Maltese)」とコラボを果たし、限定版ギフトボックスを打ち出した。クリームチークや手持ち鏡だけでなく、シールやバッグなどもついており、随所にマルチーズ要素が見られた。
また、上海ではコラボに合わせたポップアップストアも登場し、壁一面にマルチーズのぬいぐるみが積み上げられるなど、ファンが大喜びな空間に仕上がっている。
同キャラクターは中国語で「線条小狗(線のわんちゃん)」とも呼ばれており、シンプルなラインで描かれたかわいいシルエットが特徴的である。コスメブランドだけでなく、中国コーヒーチェーン大手の「ラッキンコーヒー」ともコラボを果たしており、現地で話題を呼んでいた。
キールズ × 原神
米スキンケアブランド「キールズ(Kielh’s)」が中国の大人気ゲーム「原神(Genshin Impact)」とコラボし、フェイスクリームに原神のアクリルスタンド、バッジなどのグッズが内包されている3種類のギフトボックスを打ち出した。
また、オフラインでは四川・成都などの都市で大型なポップアップストアをオープンし、ファンたちを魅了した。ゲームのキャラクターにコスプレしたファンたちが集まり、現場を盛り上げていた。
原神は日本にも上陸しているRPGゲームであり、中国では絶大な人気を誇っている。現地ではローソンやキャデラックなど様々なブランドとコラボしており、特に「ケンタッキー(KFC)」とのコラボでは店舗を囲むほど大勢のファンが押し寄せ、大きな話題となった。
高夫 × 王者栄耀
中国メンズスキンケアブランド「高夫(gf)」が現地の大ヒットゲーム「王者栄耀(Honor of Kings)」とコラボを果たし、限定版の夜ふかし保湿美容液を打ち出した。商品のプロモーションビデオにはプロゲーマーチームのメンバーを起用し、ファンの方からの注目を集めている。
王者栄耀は2015年にテンセントよりリリースされたスマホゲームであり、長年現地の若者らに支持され、かつてはユーザー登録数が2億人を突破したこともある。原神と同じく、現地ではコカコーラやバンダイナムコなど多数のブランドとのコラボを実現している。
INTO YOU × コカコーラ
中国コスメブランド「INTO YOU」は「コカコーラ」と業界を跨いだコラボを果たし、リップグロスや手持ち鏡、シールなどが含まれたギフトボックスを打ち出した。コカコーラの赤いロゴを強調した紅白の商品デザインとなっており、SNSでは多くの女性消費者からの好評を得ている。
また、上海ではポップアップストアもオープンされ、コラボ商品を模した大きなオブジェなどが置かれた空間は写真を撮る人々で賑わっていた。
INTO YOUは2019年立ち上げられた新進気鋭のコスメブランドであり、主力商品にはリップグロスなどが挙げられる。過去にもラッキンコーヒーとの異色なコラボを実現し、「モンスターズインク」などのピクサー映画キャラクターとのコラボ商品を打ち出した。
ミノン × ポケモン
日本のスキンケアブランド「ミノン(MINON)」が中国市場向けに「ポケットモンスター(以下はポケモンとする)」とコラボを果たし、保湿乳液・化粧水セットを打ち出した。ピカチュウやポッチャマなどのかわいらしいポケモンたちが商品パッケージを飾っている。
中国でも大人気なポケモンは、現地で様々なブランドとコラボしており、以前にはケンタッキーとのコラボ商品が人々を熱狂させ、連日報道されるほどの盛り上がりを見せた。
デイリークイーン × カラーキー
米アイスクリームチェーン大手の「デイリークイーン(DQ)」が中国コスメブランド「カラーキー(COLORKEY)」と異色のコラボを果たした。ピーチ&抹茶のアイスクリームがデイリークイーンの店舗に登場し、ピーチをモチーフとしたカラーキーのリップグロスなどが打ち出された。また、デイリークイーンではコラボのリップグロスを贈るキャンペーンも実施された。
カラーキーは2018年設立されたZ世代向けのコスメブランドであり、日本市場にも進出している。過去にもポケモンやピクサーなどとのコラボを打ち出しており、かわいい商品デザインで消費者の関心を引きつけている。
FLORTTE × mikko
中国コスメブランド「FLORTTE」が日本の人気イラストレーター「mikko」の作品とコラボを果たした。子ねこや子ぐまといったふわふわした動物キャラクターたちのキャップがついたリップグロスや限定デザインのアイシャドウパレットなど、多種多様なコラボ商品が打ち出された。
SNS上で高い人気を持つmikkoの作品は中国でも注目されており、上海では期間限定のテーマレストランも過去に開催された。また、広東・広州や四川・成都などの都市でポップアップストアもオープンされ、人気に拍車がかかっている。
まとめ
近年、中国では国内ブランドを支持する「国潮ブーム」が巻き起こっており、様々な中国化粧品ブランドが頭角を現し始めている。その中で、ブランドイメージに沿ったアニメやゲームとのコラボはファンの獲得に効果的であり、多くのブランドが注力している。ブランド間の競争が激化する中国市場で、どのようなコラボが現れるのか、引き続き注目していきたい。
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