ライブコマース牽引で全体2.08%増加と成長を維持

中国通販年間最大のイベントで、消費者心理の指標として注目される「独身の日」(ダブルイレブン)セールが幕を降ろした。去年と同様、今年もアリババをはじめとした大手ECプラットフォームからの売上公表はなかった。

データ会社である星図の統計では、独身の日の期間中、全ネットのGMV(取引額)は11,386億元(約24兆円)で、前年比2.08%増加と成長を果たしたが、内訳をみると、Tmall、JDといった従来の総合ECサイトの合計GMVは9,235億元で前年比1%減少とマイナス成長に転じている。その一方でDouyin(Tik Tok中国版)や快手など、ライブコマースプラットフォームは19%の成長を果たしていることから、これにより全体GMVがプラス成長を維持できていることがわかる。

▲独身の日のGMV変化(出典:星図)

市場全体が伸び悩み、プラットフォーム間の競争が一層白熱化しているが、大手の牙城を崩し、新興プラットフォームが低価格を武器にシェアを増やしている状況だ。特にライブコマースにおいては、タオバオライブが快手に抜かれ、3位に転落している。

苦戦しているのは日系だけではない

近年中国現地ブランドが台頭し、海外勢の独壇場だった一部の分野でも現地ブランドが存在感を高めてきた。これに加え、8月の処理水の海洋放出により、日系の化粧品や、食品ブランドの中国販売、プロモーション活動にマイナス影響が及んだ。

この背景もあり、今回の独身の日では、Tmallコスメカテゴリ売上トップ10(本格販売スタートから4時間の売上)は中国ブランドと欧米ブランドに占拠され、日系化粧品は姿を消した(去年は2ブランドがランクイン)。

また、日系だけではなく、米化粧品大手のエスティローダーもトップ3の地位を失い、4位に転落している。同社の7〜9月期決算では、中国事業の低迷で純利益が94%減少し、さらにアジア市場の業績不振を理由に予想をはるかに下回る業績見通しを発表したことを受け、株価は約19%暴落した。エスティローダーの他にもLVMHやカナダグースなど、直近の中国事業低迷で株価が下落している状況だ。

さらに、国潮ブームの恩恵を受け勢力を拡大してきた中国現地ブランドも全て好調とは言えない。以前SNSマーケティングを通して人気を獲得していたパーフェクトダイアリーなどの中国新興ブランドのブームが退潮し、ランキングから姿を消している。

パーフェクトダイアリーは2019年の独身の日セールで、メイクアップ1位を獲得し、コスメ業界に衝撃を与えたが、近年はその勢いを失いつつあるようだ。

カテゴリ別の取引額

▲独身の日カテゴリ別のGMV前年比(出典:星図)

独身の日の成績をカテゴリ別で見ると、家電、スマホ・デジタル製品、アパレル、コスメ・パーソナルケア、ベビー・マタニティーが前年よりも低下している。特にコスメ・パーソナルケアは前年比4.4%減で最も減少が顕著である。

これに比べ、食品・飲料が前年比7.5%増加で、スポーツ・アウトドアは同7.2%増加と成長しており、中国EC全体が伸び悩む中、健康意識の高まりを受け、これらの分野は一定の成長を維持できてきるようだ。

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