中国の経済停滞と消費低迷により、日系ブランド含め、中国市場で苦戦を強いられている海外企業が多いことは言うまでもない。これら企業の中国事業の現状や、中国市場に対する見方はどのような変化があるのか?日系ブランドを含めた外資ブランド9社の直近決算から考察していく。

コスメや高級品部門が失速

上記の企業例から見ると、コスメ部門は、世界最大の化粧品会社であるロレアルや、米大手であるエスティローダーの中国事業の減速が目立つ。

国潮の影響で消費者が中国コスメへ転換していく風潮があるほか、全体的な中国コスメ市場の低迷も要因の1つだ。中国化粧品の小売額は4月に前年比24%と2桁の成長を果たした後、伸び率が減速し、10月には1.1%まで落ちている。さらに、1~9月の中国の海外化粧品輸入額は前年比12.7%減少し、4月から6ヶ月連続でマイナス成長となった。

また、パンデミック中においても中国市場で安定した成長を見せた高級品ブランドも例外ではなく、第3四半期から減速が顕著となっている。以前から高級品のターゲット層の消費は景気に影響されにくいと言われていたが、ルイ・ヴィトンをはじめとする高級品ブランドの中国業績が軒並み減速に陥り、株価も大幅に下落している状態だ。

一部アパレル・スポーツブランドが好調

コスメや高級品が低迷する一方で、中国アパレル市場は1~9月アパレル・靴類の小売額が前年比10.6%増加し、回復傾向にある。

日系企業の中では、直近の決算でいうとファーストリテイリングの中国事業が好調で、コロナ禍で長期化していた低迷から急回復した。他にはアシックスのスポーツシューズが好調で、直近の業績が絶好調であることを理由に、今後の業績見通しを引き上げている。

また、以前新疆ウイグル綿問題により中国で不買運動が行われ、事業が低迷していたナイキやアディダスは、中国消費者の健康に対する関心の高まりとスポーツ熱により、直近の決算では成長軌道に戻り、中国事業は共に2桁の成長を果たした。

中国市場に対する見方

中国国内ブランドとの競争激化や、国民の消費に対する慎重な姿勢など、中国市場は今までにないくらい激しい変動が起きている。これにより、中国市場よりも東南アジアなど、他の新興市場へ投資する風潮も現れたが、多くの大手ブランドは継続して中国市場へ投資する意向を見せている。

実際にアディダスは中国におけるデザインの現地化を推進し、来年は商品デザインの7割を中国現地で実施する目標を発表しただけでなく、中国市場に継続した投資を行い、人材雇用を増やしていく意向も発表した。

他にも、中国事業が低迷しているエスティローダーは、引き続き中国市場へ注力し、長期的な成長を目指すと発表した。

このように中国市場は消費低迷しているものの、莫大なスケールから、今後も外資企業にとって重要な市場であり続けることは間違いない。ただ、中国の景気停滞が長期化すれば、消費者需要の変化に対する対応を含め、中国市場戦略の練り直しが必要となるだろう。


関連記事:

🔗日系企業の進出に注目すべき都市は?中国の新興都市圏事情

🔗中国は消費低迷でもエンタメ市場は急回復、その理由とは?