ゼロコロナ政策終了後にモール増加?

11月1日に、中国・武漢にて大型ショッピングモール「イオンモール武漢江夏」がグランドオープンとなり、話題を呼んだ。延床面積(建物内の合計床面積)28万8,000平方メートルを持つ同モールは、中国国内で展開されているイオンモールの中では最大規模となる

同モールではスーパーやアパレルショップなどのショッピングエリアはもちろん、カラオケや屋上スポーツグラウンドといった娯楽エリアも設けられている。オープン後は連日大勢の来客でごった返しとなった。イオンモールによると、2024年に中国で延床面積20万平方メートル以上の大型ショッピングモールをさらに2つオープンする予定である。

中国市場ではショッピングモールの建設が増え始めている。中国ビジネスメディア「贏商網(winshang)」の調査によると、今年7~9月において新たにオープンしたモールの数は前年同期比で13%増加している。2019年の同時期に比べて10%減少しているものの、ゼロコロナ政策終了後に中国のショッピング業界が回復に向かっていることが窺える

上海ショッピングモール協会によると、2023年に上海では合計45件のモール(3万平方メートル以上)がオープンする見通しであり、合計面積は300万平方メートルを超える。これは直近三年の中では最高記録であり、コロナ感染拡大に影響を受けていた建設工事が進んだことによる反動だと考えられた。

また、贏商網によると、2023年上半期における中国ショッピングモール(3万平方メートル超)の1日あたりの来客数は1万8,800人となり、前年同期比で36%増加していた。客足も徐々に回復し始めているようだ。

節約志向の高まりによるモール利用目的の変化

しかしながら、小売売上高の前年同期比伸び率からも個人消費の回復に勢いがないことが伺える。さらに、消費者らの間で節約志向が高じていることもあり、ショッピングモールを利用する目的に変化が見られ始めている

▲ 2022年10月~2023年10月の中国小売売上高前年同期比伸び率推移(チャイトピより作成)

テンセント傘下の中国市場調査メディア「谷雨数據(Guyudata)」が今年9月に公開した調査によると、消費者らがショッピングモールを訪れる目的は食事がトップとなった。その次には服の試着やサイズ確認などのアパレルショップ巡りが続き、さらに散歩や避暑するために訪れる人もいると見られる。

また、ショッピングモールを訪れる人々は主に若者であり、その目的はお買い物よりも”見てまわる”ことに重きを置いているようだ。ブランド物などの高級品よりも飲食店が人気を集め、アパレルショップ巡りも服の生地やサイズを確認するだけにとどまり、より安い類似商品を通販で購入している。

中国では最近「消費降級」という言葉が流行している。コストパフォーマンスを重視し、以前よりも出費を減らし、消費レベルを抑えることを意味する。通販で安価な商品を便利に購入できる時代において、人々のショッピングモールにおける消費は外食など、オフラインでしか利用できないものに限定されていた。

ガンダムやポケモンなどのIPによる集客

ショッピングモールの来客数が回復しきっていない中で、各モールはより多くの来客を集めるために様々な工夫を考えている。その一つがIP(知的財産)の影響力を利用するものである。

IPとはアニメやマンガ、ゲーム、映画などの作品や、それらに登場するキャラクターを指しており、中国では近年ブランドとIPのコラボレーションキャンペーンなどが盛んに行われている。人気の高いIPには膨大なファンが支えとなっており、好きなIPのポップアップストアやイベント目当てに遠くから現地に足を運ぶ者も少なくない。

中国のショッピングモールでは、人気IPによって絶大な集客効果を発揮した事例が多く見られる。

上海を例に挙げると、「ららぽーと上海金橋」における実物大の「フリーダムガンダム立像」は現地の観光スポットとして人気を馳せ、ガンダムファンだけでなく、作品に疎い一般層の方の関心をも引くことに成功している。また、上海では様々なポップアップストアがひっきりなしにオープンされている。最近では、「静安大悦城」にて『進撃の巨人』のポップアップストアがオープンされ、ストアのある3階から4階にまで続いた大行列が出来上がるほどの人気ぶりを見せていた。

また、11月17日に現地で公開される映画『しん次元!クレヨンしんちゃん THE MOVIE 超能力大決戦 ~とべとべ手巻き寿司~』に合わせて、「白玉蘭広場」では10メートルあるカンタムロボを設置したポップアップストアがオープンされ、SNS上で大きな注目を集めていた。

▲ 上海クレヨンしんちゃんポップアップストア(中国SNSより

まとめ

コロナ感染拡大が収束したことにより、中国ショッピングモール市場はリバウンドを見せ始めている。しかしながら、個人消費は低迷を見せており、景気回復も減速気味である。そうした中で、人々は出費を抑えるために、ショッピングモールの利用は外食などにとどまる傾向を見せている。ショッピングモールは物を買うよりも、体験する場所に転じていた。

今後、中国のショッピングモール市場がさらなる活気を見せるのか、引き続き注目していきたい。

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