ニッチな文化を受け入れ、消費行動に移していくZ世代の登場により、サブカルチャーが拡大傾向にある。
中国ではすでにJK制服、ロリータファッション、漢服といった「三坑」カルチャーがあるが、最近ではアイドルやゲームのキャラクターなどを模した、いわゆる「推しのぬいぐるみ」がビジネスとして拡大している。
ぬいぐるみと言うと、子供のおもちゃだと思われることが多いが、ぬいぐるみとの外出や、写真撮影、新しい洋服への着せ替えなど、大人が楽しむおもちゃとして「推しのぬいぐるみ」が中国の若い世代で流行しているのだ。
愛好者の98%は女性、年間売上は10億元以上
「推しのぬいぐるみ」、略して“推しぬい”の中身は綿花であることから、中国では「綿花娃娃(コットンドール)」と呼ばれ、そのデザイナーと所有者は「娃妈(ぬいぐるみのお母さん)」と親しく呼ばれる。
関連調査では、2021年中国「綿花娃娃」のオンライン売上は10億元に達し、ネットでぬいぐるみを購入した人は100万人で、2017年の数万人から大幅に増加。さらに杭州などでぬいぐるみの展示会が開催されたことにより、さらに盛り上がりを見せている。
愛好者は女性が圧倒的に多く、全体の98%を占めている。さらに00後生まれは43%、95後生まれは26%と、約7割がZ世代の若者である。
ぬいぐるみを買う理由について、「可愛さに癒される」が85%、「愛情を注ぐ対象」が58%、「コレクション用」が55%であった。
さらに、ぬいぐるみに没頭すると、着せ替え衣装、ヘアスタイル、一緒に出かける際のぬいぐるみを入れるためのカバンなど、関連支出も増える。REDでは2023年のぬいぐるみ衣装の消費金額は前年比146%増で、平均客単価も前年比32%増加。市場規模拡大に伴い、ぬいぐるみデザイナー、修理の職人といった職業も出現している状態だ。
ぬいぐるみ市場はどこまで拡大できるか
中国の“推しぬい”は、サブカルチャーとして一部の若者の間で流行していたが、今年はある事件により、多くの大衆に知られる存在となった。
その事件というのは、ある愛好者が“推しぬい“の誕生日を祝うため、飲食店の店員にベビーチェアを要求したことから発生。店員は理解せず、要望を断ったとして中国のweiboで話題となった。「ぬいぐるみを本当の人間として扱う行為が理解できない」とのコメントが上がり、サブカルチャーを巡る論争が起きている。
サブカルチャーが大衆の理解を得られる文化になるまで拡大するかは未知数であるが、インターネットが便利な現代では、ファンのコミュニティが存在する限り、サブカルチャーが消えることはないだろう。
しかし、“推しぬい”の人気が増加している一方で、まだぬいぐるみのビジネスモデルが確立しておらず、前金を受け取ってから製造を開始し、製造完了後に残金を受け取るパターンが多く、取引するにはリスクが高い状況にもある。
また、中国政府は以前ファングループの過激な応援行為を規制し、オーディション番組を放送直前に中止したり、ゲーム業界の未成年中毒防止を強化したりするなど、エンタメ業界の取り締まりを強化している。そのため、“推しぬい”のようなサブカルチャーも同様にいつか規制が入るリスクを考える必要があるだろう。
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